101
「クフフ……成程、そういうことだったんですね」
突如として割り込んできた声
特徴的な笑い方――ツナだけはこの笑い方に心当たりがあったが、だが今この男は牢獄の奥深くに囚われているはず…
「やはりあの研究所にいた愛結で間違いなかったわけですか。あなたはレンですよね?生意気そうな目がそっくりです」
だが、少し前にもこの男は自分たちの前に現れたではないか
彼と繋がっている特異な少女の身体を媒介にして、実体として一時的にだが現れた
あの時と同じ、嫌な予感が感覚に訴える
『あら…随分と懐かしい顔』
「なるほどなァ…あの女を媒介にして現れるなんてな。よくやるぜ、骸」
「クフフフフ」
――コレは、間違いなくあの六道骸だと
クロームが飛ばされた辺りに、まるで最初からいたかのように壁に寄り添っていたのは、先程まではいなかった男、六道骸
恐らく意識を失ったクロームの身体を借りて実体化したのだろう
特徴的な髪型も、笑い方も、嫌味な程丁寧な口調も、
『―――その目以外はなぁんにも変わってないわね』
幼少期にはなかった、鮮やかな赤色の瞳
「あなた方が消えた後、この瞳を埋め込まれましたよ」
『お互い悪運だけは強いみたいね』
愛結の黒い瞳はノアの物質だが、骸の赤い瞳は正真正銘イノセンスだ
あの研究の"本当の意味"での成功者は、もう死んでいるシルフとこの骸の2人だけだろう
クフフと笑っている骸の顔を恐る恐る見て…ツナは泣きそうになる
「残念ながら僕が離したいのはノアのあなたではありません。さっさと体の支配権を愛結に渡してもらえます?」
口許は辛うじて笑ってはいるが、目は全くと言っていい程笑っていない。むしろ不機嫌そうにその目を細めている
今、彼が相当に機嫌悪いことは初めて会うアレンですら分かった
「大体よくも思いきりクロームを吹き飛ばしてくれましたね、レン。あなたはいつからそんな偉くなったのですか?」
ポンポンと勢いよく吐き出される棘のある言葉に、ツナは顔を引きつらせる
…というかこんなこと言われて見るからに怒りの沸点が低そうな紅蓮が黙っていないような……
ドォォンッ!
「……ほーそーんなに俺に喧嘩売りてェんか、分かった分かった。じーっくり相手してやるよ…!」
篝火を深く突き刺した地面から、土埃があがる
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
黒い…オーラが黒い。人間道とはまた違った黒さが骸からにじみ出ている気がする
三叉槍を構えた骸は、ツナの横を通り過ぎる時、小さく囁く
「 」
「え…!?」
。
[ 270/461 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]