悲しき詩 | ナノ




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『ツナは知ってるわよね?エストラーネオファミリーのコト』


「、っ骸たちを実験体として使ってたファミリー、でしょ?」


突然話を振られ言葉に詰まるも、ツナはその問いかけに答える

何の関係もない、もうとっくに終わった話題を何故今さら――


「…あ、」


――いや、おかしい

終わったもなにも、愛結は骸たちの事件を知らない

愛結と初めて会ったのはあの黒曜での戦いが終わった後なのだから…


「なんで愛結ちゃんが、それを…」


『知ってるのかって?答えはとても簡単。この子もそこにいたの。実験体としてね』


地獄を経験してきたのはシルフだけではない


『教団のヤツらは勘違いしてるの。あの子はあの実験でエクソシストになったわけじゃないのよ?』


クスクス笑いながらリナリーがいるハコを撫でる


「一体どういう…」


「答えはとぉっても簡単だよぉ?リナリー」


とても簡単で、とても矛盾した答え


「お前たちはぁ、高井愛結というエクソシストが人間の手によって造られたエクソシストだと思ってるんだろうけどさぁ」


「逆なんだよなーコレが」


ロードの言葉をティキが引き継ぐ

それらの話を愛結は薄く笑みを浮かべて聞いている


「愛結は元々イノセンスを保有していたんだよ。青い瞳のイノセンスをな。後から入れられた黒い瞳は俺らと同じノアの力。これがどういう意味か分からないワケじゃないだろ?」


両目というイノセンスを元々保有していたのに、実験によって片目が奪われノアという全く正反対の異分子をその体に入れられた愛結

エクソシストがノアの力を受け入れるなんて、拒絶反応が出なかったこと自体が奇跡に等しいこと

いや…半分となったイノセンスが体を守る為に動いたおかげだろう

ノアという異分子に身体と心が耐えられないと判断した時、強制的にノアの力を奥深くに沈めたのだ

記憶を道連れにしてでも、沈めなければ愛結は耐えることができなかった

今は逆にノアという異分子がイノセンスを封じ込めている状態

あの時…暴走して研究員たちを血祭りにしたときのように、ノアが全面に出ている状態では奥底にいるイノセンス…もとい愛結には何も届かない


『理解頂けたかしら?』


愛結なのに、"愛結"ではない存在


「眠ってるほうの愛結が"起きない"限り、コイツはこのまんまさ」


奥底に沈められている愛結が、何らかの方法で目覚めてノアの力を受け入れない限り

紅蓮はくすりと、笑みを浮かべた




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