悲しき詩 | ナノ




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『あ、信じられないって顔してる』


皆の表情を見て楽しげに笑うと、ソファからゆっくりと立ち上がる


『みんなからすればアタシは高井愛結だもんねぇ?でもさぁ……』


ニコリと笑う愛結の肌の色が、どんどん褐色へと染まっていく


『これだったら信じてもらえるかな?』


額に聖痕こそないが、その姿はロードたちと同じ、ノアだった


「僕が夢でティッキーが快楽、紅蓮は憎悪で、愛結姉は慈愛。アレンたちの前にいるのは、アレンたちが知ってた愛結姉じゃないんだよぉ」


レロの上に腰かけたロードがそう説明する


「……っ僕の知っている愛結は!ノアなんかじゃありません…!!」


それを認めなくないとばかりにアレンは声を荒げる


『なにー?アタシがあんたたちと同じエクソシストだとでも言いたいわけー?―――ふざけないで


また、だ

威圧感のある言葉にアレンは息を呑む


『ふふっ。息苦しくて辛いでしょ?これがアタシの力』


コツリ、足音を立ててゆっくりと歩き出す


『アタシの力は支配。言葉に力を乗せて対象物を意のままにできる、アタシと紅蓮の力』


コツリ、コツリ


『リナリー・リー。あなたは知っているはずよ』


リナリーとチャオジーが囚われているハコの前で立ち止まり、リナリーと視線を合わせる


「、なにを…」


『咎落ちと実験』


ピクッとリナリーの肩が揺れた


「……た、確かにあの"実験"も…咎落ちのことも知ってるわ…でも!それが行われていたのはあなたが教団に来る前のことよ!」


コムイが室長となって以降そのような実験は禁止され、犠牲者を出すこともなくなったはずだった


『……甘いわね、リナリー』


だがそれを愛結は憐れむように、だがはっきりと否定する


『あんな腐った教団が、たかが室長に言われただけで素直に実験を中止したと本当に思ってたの?』


リナリーの目が見開かれる


『ふふっ…そう、実験は秘密裡に続けられた。教団の外で、見つからないようにひっそりと』


そう言って、愛結は口許をゆっくりと歪めた




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