悲しき詩 | ナノ




95








「あなたたちが本当に恐るべきは人間ですよ」


損傷した左腕を自己修復しながら、アレンは静かに宣言する


「あなたたちは人間をなめすぎている」







「―――どうしたラビ」


"ラビ"はラビを眺めながら呟く


「"そんなの"、ただの歴史の一部に過ぎないだろ…?」


辺りを埋め尽くす、大量の仲間たちの棺に……"夢"だと分かっていても、ラビは動揺を隠せない







「あ……う……」


ブツブツと壊れたように、頭を抱えて座り込むユミ


「まだまだ悪夢は始まったばかりだよ、姉さん」


そんな壊れかけた姉の姿を楽しそうに笑いながら眺めるシルフ





―――風が、吹く





「―――依存、ねぇ」


ゾッとする程、感情がない声


「確かに俺はアイツに依存しているのかもしれねぇ」


「……っ」


「でも俺たちはそれでいいんだよ。憎悪と慈愛は反発しあい、惹かれあう。対極でありながら一番近いのが俺たちだからな」


床に落ちた篝火に目をくれることなく、淡々と喋る紅蓮


「喜べ、沢田綱吉」


ゆっくりと、顔をあげ視線を合わせる


「お前は"紅蓮"としてではなく、"憎悪のノア"として殺してやる。跡形もなく」


ニコリと笑う紅蓮から放たれる強烈な、息するのも辛い程の殺気に眩暈すらする







そんな、各々の緊張が高まって、頂点に達しようとした時

風が、変わった


『――――…』


ずっと眠り続けていた愛結が、目を覚ました




目覚めた彼女

吉となるか、凶となるか…



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