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「あなたたちが本当に恐るべきは人間ですよ」
損傷した左腕を自己修復しながら、アレンは静かに宣言する
「あなたたちは人間をなめすぎている」
「―――どうしたラビ」
"ラビ"はラビを眺めながら呟く
「"そんなの"、ただの歴史の一部に過ぎないだろ…?」
辺りを埋め尽くす、大量の仲間たちの棺に……"夢"だと分かっていても、ラビは動揺を隠せない
「あ……う……」
ブツブツと壊れたように、頭を抱えて座り込むユミ
「まだまだ悪夢は始まったばかりだよ、姉さん」
そんな壊れかけた姉の姿を楽しそうに笑いながら眺めるシルフ
―――風が、吹く
「―――依存、ねぇ」
ゾッとする程、感情がない声
「確かに俺はアイツに依存しているのかもしれねぇ」
「……っ」
「でも俺たちはそれでいいんだよ。憎悪と慈愛は反発しあい、惹かれあう。対極でありながら一番近いのが俺たちだからな」
床に落ちた篝火に目をくれることなく、淡々と喋る紅蓮
「喜べ、沢田綱吉」
ゆっくりと、顔をあげ視線を合わせる
「お前は"紅蓮"としてではなく、"憎悪のノア"として殺してやる。跡形もなく」
ニコリと笑う紅蓮から放たれる強烈な、息するのも辛い程の殺気に眩暈すらする
そんな、各々の緊張が高まって、頂点に達しようとした時
風が、変わった
『――――…』
ずっと眠り続けていた愛結が、目を覚ました
目覚めた彼女
吉となるか、凶となるか…
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