悲しき詩 | ナノ




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―――あああああぁぁぁぁあっ!!!


ユミの甲高い悲鳴に、ティキは肩をすくめる


「あーうるさ」


ちらりとユミが崩れ落ちたのを見て興味なさそうに呟くと、目線を前に戻す

その先にはリナリーら閉じ込められているハコに背を預けて気を失っているアレンがいた


「一度じゃ無理だったか」


進化しただけあって前のようにあっさりと壊すことができず、ティキは軽くため息をつく


「でももう抵抗すんなよ?少年」


今度こそ確実に壊すため、ゆっくりとアレンに向かって歩いていく


「……こ、ないで…」


それを見ていることしかできないリナリーは震える声で叫ぶ


「彼に、私の仲間に触らないでよっ!!」


――みんな、戦っている

ラビも、アレンもユミも…ツナたちでさえも


――みんな、戦っている

なのにラビはロードの術らしきものによって動かなくなり、ユミは悲鳴をあげて頭を抱えたまま動かなくなり……クロームの姿が見えない


――みんな、戦っている、のに


「触らないで…!」


なのに自分は戦うことすらできず、ただ叫ぶことしかできないこの歯がゆさ

感情任せにハコをドンドンと叩く


「……っ、」


その音で、アレンは目を覚ます

傷だらけになりながら、それでも立ち上がる


「―――心までは…砕かれるもんか」


脳内に浮かび上がる、沢山の人たち

教団の皆、日本で知り合った人たち、そして愛結


――負けるわけには、いかなかった


「アレンくん…」


「あなたたち闇から…絶対、逃げるもんか」


よろめきながらも再び立ち上がったアレンに、ティキは小さく声を漏らした


「―――」


何を言ったのかは読み取れなかったが――その眼差しには、何の感情も浮かんでいない





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