悲しき詩 | ナノ




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「……そ、っそうよ!シルフは今ノアに操られてるのね!?大丈夫、お姉ちゃんがちゃんと助けてあげるから!」


ふと思い当たった可能性に顔を輝かせる

そうだ、そうに違いない――あの子は無理やり、自分の意志に反して、


「―――なんていうかさぁ、アンタは自分の認めること以外は絶対に受け入れないなーとは思ってみてたけどさぁ」


いい加減現実見たら?姉さん

シルフの武器によって、ユミの頬に小さな切り傷ができる


「……な、んで……何でこんな酷いこと……私たち、姉弟なのに……」


「ははっ!面白い冗談だね!言っておくけど僕は姉さんのこと一度たりとも"姉"だと思ったことなんてないよ?」


「…っ!?」


そんな馬鹿な、そう反論しようとしたユミだったが、シルフの顔を見て言葉を失う


「呑気に馬鹿みたいに笑って生きてきた姉さんは僕にとって一番近くて一番遠い人だよ」


――目の前にいるこの少年は、一体"誰"?


「僕をちっぽけな金で売り飛ばしておきながら実験に成功した途端すり寄ってきたあの人たちも憎いけど、何も知らずに生きてきた姉さんのほうがもっと憎い」


クスリと笑うも目は凍りついていて、無意識のうちに足が後ろに下がっていく


「もう高井愛結への復讐は終わった。あの悪夢をぜーんぶ思い出してやったからね。だから今度は姉さんの番。心配しないで?姉さんを殺した後寂しくないようにオトウサンたちも殺してあげるよ」


その正気とは思えない、現実ではないかのようなそれに、ユミは動くこともできずただただ立ち尽くすしかなかった










「ここは…」


「ココから出られたらブックマンの勝ち。簡単な遊びでしょぉ…?スタートv」


目を開けたら広がっていた現実感のない空間に響くロードの声

空間移動でもしたのか、――床からニョキリと現れたロードの人形がラビの推測を否定する


「僕は戦わないよぉ?―――ほら、きたよ…キミの戦うモノが…」


突如感じた気配に振り返ると――そこにいたのは"ラビ"だった

一瞬動揺するも、イノセンスを発動し"自分の偽物"に攻撃を仕掛けるも…それはあっけなく封じ込まれる


「ダメさ。お前は今、心だけ連れてこられてんだ。イノセンスはないんだよ」


偽物の静かな声を肯定するかのように、ラビのイノセンスが砂と化す


「…"空間移動"…?そうだねぇ…もしそれだけしか僕の能力を聞いてなかったら、誤解しちゃうかもねぇ…」


ロードの声に、ラビは目を見開く


「僕がノアで唯一方舟を使わずに空間移動できるのは、僕の住む世界と現実世界を繋げることができるから」


ぷかりと、ロードは浮かび上がる


「僕はノアの"夢"を持つ羊。キミがいるココは、ロード・キャメロットというノアが生んだ夢の中なんだよ!」


クスリ――楽しげに、ロードは嘲笑った




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