悲しき詩 | ナノ




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「もし、もしそうだと仮定しても矛盾してるじゃないですか!ノアだというのなら何故咎落ちにならないんです…!」


咎落ち――それはイノセンスを裏切ったエクソシストがイノセンスに殺される現象

命惜しさにノアに味方を売ってしまったスーマンが咎落ちになったというのに、ノアだという紅蓮と愛結がそうならないのはおかしい話ではないのか?


「あぁ、それか。なぁアレン、俺たちの適合率知ってるか?」


「そんなこと今は、」


「50%だ」


アレンの言葉を無視して紅蓮は続ける


「50%…俺たちの適合率はいつ測っても50%で変わらねーんだけど、何でか分かるか?」


その数値は、装備型イノセンスの適合者である紅蓮だけならそう驚くレベルではないが…寄生型イノセンスの適合者である愛結にとっては驚く程低い

適合率の数値が高ければ高い程イノセンスの力を引き出せているのだから、彼らは50%、半分しかイノセンスの力を引き出せていないという話になるのだが……

これで適合率100%を超えて"臨界者"となったらどれだけの強さを手に入れるのか――想像するだけで恐ろしいものだ


「分かんねーかなァ。俺たちはノアとイノセンスの力が1ミリの狂いもなく均衡な状態で保たれてるんだよなー。イノセンスって本当面白いよな」


人間を兵器にするためならそんな危うい均衡すら作ってしまうイノセンスが滑稽過ぎて笑えてくる


「あ、そーそー。イノセンスって言えばさ、」


ティキが思い出したとばかりにアレンを――正確にはアレンの左手を見る


「なんでソレまだあんの?オレぶっ壊したはずなのによ」


けっこう衝撃だったんだぜー?と呟くティキ

そう、確かにアレンの左手は一度ティキ・ミックによって破壊された

いや…ティーズに心臓も喰われたのだから、一度死んだといったほうが正しいのかもしれない


「壊せてなかったんでしょう?ここにあるんだから」


ティキに負けた後、アジア支部の人に助けられて血の滲むような厳しい鍛錬をした

血反吐を吐いたのだって数えきれない

そして、レベル3襲撃の際に本当にやりたいことを自覚して…"神ノ道化"が復活したのだ


「おっイノセンスにキョーミでてきたぁ?ティッキー」


ちょっとだでてきた、と返すティキは言葉を続ける


「ティーズに心臓喰われても生きてるのはその左腕のせいなわけか?」


その言葉に大きく反応したのは仲間たちだ


「ア、アレンくん!?」


「心臓って…聞いてねぇぞアレン!そんな傷負ってんのか!?」


「大丈夫なのぉ!?」


心配かけたくなくて黙っていたアレンは慌てて説明する


「イノセンスの一部が心臓になってくれてます、問題ありませんよ」



「…………不死身?」


「違うと思う」


ぽつりと小さく呟いたクロームにツナのツッコミが即座に入っていたのは余談




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