悲しき詩 | ナノ




82



「う…っ?」


その眩しさに目が慣れ周囲に気を配れる余裕ができた頃、アレンの体が衝撃でよろめいた


「アッレーン♪」


エヘヘ、と満面の笑みを浮かべて自分に抱き着いてきた人物に、アレンは驚く


「ロード!?」


いつかの巻き戻しの街で出会ったノア、敵であるはずのロードはキャハvとアレンの首に手をまわして―――その唇を、奪った

それを目撃してしまったラビたちは固まるも、一番衝撃を受けたのがアレンなのは間違いないだろう

レロによってロードが引き離された後も、心ここに非ずな様子で突っ立っていたのだから…


「う、わぁ……」


「……かわいそう…」


思わずツナの口から引きつった声が出るのも仕方がないことだろう

敵(しかもまだ幼い女の子)にキスされたのだ…その衝撃は海より深く山より高いことは容易に察することができる


「ロード何おまえー。少年のことそんなに好きだったの?」


そんな、少し緊張感がなくなった空間に響いた声で、瞬間的に場が緊張感を取り戻す

椅子に座り料理に手をつけている男――ティキ・ミック


「ファーストキスだったりして?」


そのティキの後ろにあるソファに腰かけているのは、エクソシストであるはずの、紅蓮


「なぁ、教えてくれよアレン」


「…あなたには関係ないでしょう」


当たり前のように"向こう側"にいる紅蓮に、リナリーらは驚きを隠すことができない


「な、なんで紅蓮が、ここに…!?」


彼のこともまた"家族"と思っていだろう、リナリーの悲痛な問いかけにも、紅蓮の表情が変わることはない


「はは、傑作だなアンタら。本気で俺のこと信じてたんだ?俺はお前らのこと一瞬たりとも信じた事なんてないってのにな」


「私たちを裏切ったの…っ」


「裏切ってねーよ。最初から仲間なんかじゃなかったし」


ツナたちは紅蓮の隣に横たわっている人物を見て言葉を失っている


「俺がお前らのところにいたのは、コイツを手に入れるためだ。手に入った以上、もうお前らは要らない」


赤い髪が漆黒のドレスにとてもよく映えている彼女は、その目を開くことなく眠っている


「愛結ちゃん…」


傷一つない様子に取りあえず安堵はするも、安心はできない


「待ってたぜーボンゴレとその守護者、そしてその他諸々」


「……紅蓮、」


「お前らとは色々遊びたいところだが…その前にお前らも何か食うか?」


愛結が眠っているソファから離れ、用意していた椅子に行儀悪く腰かける


「そうしろよ、俺もちょっと少年に聞きたいことあるし」


紅蓮とティキの、命令とも取れる誘いにアレンはハッキリと首を横に振る




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