悲しき詩 | ナノ




81 激戦の幕開け




コツ コツ コツ …


神田とクロウリーを残して先に進んだアレン達は、長い階段を登っていた

必ず追いつくと言った2人の姿は、まだ見えない


コツ コツ コツ …


リナリーの手を引いているアレンを先頭にリナリー、ラビ、ユミ、チャオジー、クローム、ツナの順番で誰も口を開くことなくひたすら足を進めている


コツ コツ コツ コツン


「…がんばらなきゃ」


そんな静寂を破ったのは、リナリーの独り言のような呟きだった

本人も口に出したつもりはなかったのだろう、皆の視線を受けて口に手を当てている


「――やっぱり足、無理してるでしょう」


リナリーの傷ついた足ではこの階段は決して楽なものではないだろう

それでも泣き言言わずについてくるリナリーを、ツナとクロームは見直していた


「ユミは疲れたぁ!階段長いよねぇリナリー!」


――少なくともこの甘ったれた誰かとは大違いである

先程から少し歩けば疲れただの足が痛いだのもう歩けないだの…

一般人であるチャオジーやクローム、怪我人のリナリーは文句言わずついてくると言うのに、至って健康そのものなエクソシストであるユミがそんな様子では情けないとしかいいようがない


「ち、違うの、考え事!教団に戻ったらすぐに鍛錬しなおさなきゃって!」


今回の自分の不甲斐無さを痛感しての言葉なのだろう

その言葉にラビは呆れながらも、自分は寝る!と断言している(アレンは食べるらしい)


「私はねー、うーん……ラビと一緒にお昼寝でもしたいなぁ」


こてん、と首を傾げながら言ったユミにかけられる褒め言葉


「…お二人は何したいですか?」


その輪から早々に離脱したアレンがツナたちに問いかける


「俺は……並盛で、愛結ちゃんも含めた全員で笑えたらいいな」


少しだけ照れくさそうに、でもハッキリとその願いを口にするツナ


「私も…愛結ともっと、お喋りしたいな……」


直接愛結とまともに喋ったことがないクロームの願いもまた、ささやかなものだ

永遠に続くかと思うほど長かった螺旋階段が、終わりを告げる


「そうですよね、僕もツナたちにも残してきた仲間がいます。彼らに"ただいま"って…笑って言わなきゃいけませんよね」


最後の一段を登りきて―――光の中へと足を踏み入れた




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