悲しき詩 | ナノ




69



「――走れ!崩壊の少ないところに!」


弾かれるように、その言葉に従い崩れ始めた場所から安全な場所へと移動する

途中リナリーが崩壊に巻き込まれそうになるが、アレンのお蔭で助かったりしつつ、取りあえず一息つくアレンたち


「…これからどうするさー」


「どうするも何も…取りあえずロードの扉を目指して行くしかないでしょう」


息を整えつつ今後のことを話し合うアレンらだったが、そこに震える声が混ざる


「……ねぇ…何で…何でシルフが……」


「、ユミ…」


「だって…だってあの子がここにいるわけないじゃない…片腕がなくなって、ただでさえ危ないのに、何で……」


青ざめた表情で小さく呟く姿に演技は見えず、彼女なりに本気でシルフの身を案じているのが分かる


「大丈夫さユミ。シルフもノアを追ってきたのかもしれないし、アイツだって立派なエクソシストだからきっと大丈夫だって!」


「そうよ、紅蓮も高井愛結のこともきっと相手の嘘に決まってるわ!だから泣かないで、ユミ…」


口々に慰めの言葉を口にするリナリーらの三流青春劇のようなやり取りを、呆れたように少し離れた場所で見ているツナたち


「…よくここまで自分たちの都合のいいように解釈できるわね、ほんと…」


この状況で本気で全て敵の嘘だと思っているのだったら本気で救いようがない

常に最悪を想定しながら動かねば、いざ"最悪の事態"に陥った時動けなくなるわけで、そんな甘ったるい"希望"なんて不要なのだ


「紅蓮だけでなくシルフまで裏切った、ということでしょうか…」


「フン。元より変なヤツだったけどな」


それよりも、と先程渡された鍵を見せる神田


「これからどうするかだ」


何の変哲もないただの鍵だが、あの状況下で渡された以上本当に出口に…ロードの扉に繋がると見て間違いはないだろう


「あと3時間でロードの扉まで辿りつけるでしょうか?」


<もうあと2時間レロ〜>


「もう1時間も経ってたんだ…」


もう無駄に時間を潰すことはできない

誰がこの鍵を使うかで若干揉め、仕方がないので公平な勝負で決めることとなった



「「「ジャンケン、ポン!!」」」






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