悲しき詩 | ナノ




66



「そんなことより、どうするつもりだ?出口はないんだろ」


術者であるクロームに加えレロまで言っていたのだから、このまま闇雲にドアを壊し続けても意味はない


「この空間、完全に閉ざされてるから…」


「うーん……」










「―――あるよ」


ふいに、アレンの顔の真横に、声と共に手が伸ばされた


「出口だけなら、ね」


その手に持たれている西洋風の鍵

"閉ざされた空間"に突如現れた第三者の存在


「――!?」


驚き、振り返った先にいたのは――ぼさぼさの癖のある髪、分厚い眼鏡をかけた男で……それはこの場にいる一部の人間にとって、とても見覚えのあるものだった


「あ、あなたは…!!」





「コール」

「「「ロイヤル…ストレート…フラッシュ…」」」

「また僕の勝ちですね」

「「「だー!チクショー!!」」」





「「「ビン底メガネ!!」」」


とある汽車の中、パンツ一丁にされたクローリーと、逆に男たちをパンツ一丁にしたアレンと、それをただ傍観していたラビの声が綺麗に重なった

変な名前で憶えられて男は嫌そうな顔をするが、よく特徴を捉えた名称ではあった


「な、なんでここにアンタがいるんさ!」


何故"一般人"である彼がこの方舟にいるのか――その問いかけに、男が口を開いた時


ドゴォンッ


「!!」


前触れもなく、男の周囲にいくつもの落雷が発生し、轟音を立てる

咄嗟に距離を取ったアレンたち3人とは対照的に、男はその場を動こうともせず呑気に煙草を吸う


「な、なにが起こったのである!?」


「…私の、幻覚」


周囲に残る焦げた跡はとても"幻覚"とは思えず、それだけ精度の高い幻だったと言える

驚くラビらとは対照的に、クロームが男を見る目は鋭い


「幻覚、って…めっちゃ焦げた臭いするんだけど!?」


「大丈夫であるかビン底メガネ!」


ラビとクロウリーの呼びかけに応えぬ男の表情は、分厚い眼鏡に隠されて伺うことはできない


「おい」


唐突に、神田が話を遮る


「そいつ、殺気だしまくってるぜ」





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