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「そんなことより、どうするつもりだ?出口はないんだろ」
術者であるクロームに加えレロまで言っていたのだから、このまま闇雲にドアを壊し続けても意味はない
「この空間、完全に閉ざされてるから…」
「うーん……」
「―――あるよ」
ふいに、アレンの顔の真横に、声と共に手が伸ばされた
「出口だけなら、ね」
その手に持たれている西洋風の鍵
"閉ざされた空間"に突如現れた第三者の存在
「――!?」
驚き、振り返った先にいたのは――ぼさぼさの癖のある髪、分厚い眼鏡をかけた男で……それはこの場にいる一部の人間にとって、とても見覚えのあるものだった
「あ、あなたは…!!」
「コール」
「「「ロイヤル…ストレート…フラッシュ…」」」
「また僕の勝ちですね」
「「「だー!チクショー!!」」」
「「「ビン底メガネ!!」」」
とある汽車の中、パンツ一丁にされたクローリーと、逆に男たちをパンツ一丁にしたアレンと、それをただ傍観していたラビの声が綺麗に重なった
変な名前で憶えられて男は嫌そうな顔をするが、よく特徴を捉えた名称ではあった
「な、なんでここにアンタがいるんさ!」
何故"一般人"である彼がこの方舟にいるのか――その問いかけに、男が口を開いた時
ドゴォンッ
「!!」
前触れもなく、男の周囲にいくつもの落雷が発生し、轟音を立てる
咄嗟に距離を取ったアレンたち3人とは対照的に、男はその場を動こうともせず呑気に煙草を吸う
「な、なにが起こったのである!?」
「…私の、幻覚」
周囲に残る焦げた跡はとても"幻覚"とは思えず、それだけ精度の高い幻だったと言える
驚くラビらとは対照的に、クロームが男を見る目は鋭い
「幻覚、って…めっちゃ焦げた臭いするんだけど!?」
「大丈夫であるかビン底メガネ!」
ラビとクロウリーの呼びかけに応えぬ男の表情は、分厚い眼鏡に隠されて伺うことはできない
「おい」
唐突に、神田が話を遮る
「そいつ、殺気だしまくってるぜ」
。
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