悲しき詩 | ナノ




57 適合率50%




どこかでよばれたきが、した










その日、やけに大人たちが慌ただしそうにしていたのはよく覚えている

恒例だった朝の実験もしなかった程だから相当だろう


『……何か、あるのかな今日…』


嫌な予感がする、そう…これ以上にない程の最悪な予感が


「少なくても僕らにとってはイイコトではないのは確かですね」


「あんな気味悪ィ笑顔見てたらそう思うらよ」


「…ほんと、めんど…」


少年――"骸"にしがみついていた少女はちらりと後ろを振り返る


『レンも、そう思う?』


「……興味ねーし」


あの無表情だった新入り(もう今は"新入り"ではないが)も、最近はそっけないながらも返事をしてくれるようになっていた

"レン"というのは本当の名前ではなさそうだが、本人が否定も肯定もしない以上、そう呼ぶしかない

もっとも少女にとっては"レン"が偽名だろうがそうでなかろうが、会話ができるようになっただけで喜ぶべきことだった

相変わらず他人と一線引いた態度ではあるが……レンもまた、少女にだけは少しだけ、本当に少しだけだが態度が柔らかかった


『うーん…、』


包帯が巻かれた自分の手足を見ながら唸る少女の頭を撫でながら、骸は言い聞かせるように優しく語る


「きっと、大丈夫ですよ。僕らは今までなんとか大丈夫だったでしょう?」


「心配しすりなんらよ!ピーピー泣き虫うるさいんよ!」


『け、犬ちゃんひどい…!最近そんなに泣いてないもん!我慢してるもん!』


「…そうやって反応するからだよ…」


「まぁまぁ、千種。そこが愛結の面白い部分じゃないですか」


「つまりただのバカ」


『み、みんなひどい!私だって、』


顔を真っ赤にして否定の言葉を続けようとするが、ふいにそれは不自然に途切れた


「…愛結?」


『――くる』


ガチャリ


硬い声で呟かれた次の瞬間、足音という前触れもなく扉がゆっくりと開かれた




[ 226/461 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -