悲しき詩 | ナノ




55



「……っ、?」


いつまで経っても訪れない衝撃に、クロームは恐る恐る目を開ける


「――…邪魔しやがって」


まず見えたのは、見慣れた色の着物で……そこから突き出ている大剣に、クロームは目を見開く

自分に突き刺さるはずだったそれを、代わりに庇ってくれたのは――


「…う、そ……ユ、キエ…」


剣が引き抜かれ、地に倒れたユキエに駆け寄るクローム

血こそ流れていないが――誰の目から見ても、致命傷だった


「なんだよアクマのくせに――、っと時間切れか」


興ざめだとばかりにため息をつくと、上空に浮かぶ城を見上げる紅蓮


「せっかくここから面白くなるっつーのにさ」


「紅蓮、お前…!」


パァン!


ツナの拳を手のひらで受け止め、紅蓮は耳元に囁く


「しょーがねぇから少しだけ教えてやるよ、愛結のこと」


「…!」


「愛結はぐっすり眠ってる。もちろん傷一つない状態でな。夢の中で正しい過去を追体験してるのさ」


「何を、」


「はは、あとは自分で考えな」


近づけていた顔を離し、ニヤリと笑う


「じゃあな、ボンゴレ。次会う時が、お前たちの最期だ」


ガンッ


「…っ」


顔スレスレにつけられた大剣に言葉を奪われる


「分かっただろ?今のお前じゃ俺は殺せねぇよ」


ハッキリと示された実力差が、その言葉が嘘ではないと証明する

"殺す"覚悟がないことを示唆していたのかもしれない

最後まで息ひとつ乱さず、余裕の表情のまま紅蓮の姿は唐突に掻き消えた

おそらくあの城…千年伯爵たちの元へ戻ったのだろう


「……、」


辺りを見渡すと戦いは取りあえず終わったようで、戦闘音は聞こえてこない


「ユキエ、ねぇユキエ…っ」


残ったのは、明らかな致命傷を負ったユキエと、その傍で泣きじゃくるクロームで―――明らかな、敗北感

アレンが駆け寄ってくるのを見ながら、死ぬ気モードではなくなったツナは拳を強く握りしめた




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