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「オラァッ!」
ガキィン
「く…っ!」
紅蓮の剣筋は大雑把なもので、一振り一振りは大きい
大きい、のだが……それを補って余りある程の桁違いの力がある
剣を受け止める体が軋むのを感じ、ツナは顔を歪める
「お前に受け止めれる程、俺の剣は軽くねェっての!」
必死に受け止めるツナとは裏腹に、紅蓮の顔から余裕は消えない
そう、一対一なら分が悪い――だが、
「…っ、と…」
"飛んできた火の球"を避けるため、紅蓮はツナから一旦距離を取る
幻術だと分かっていても、一瞬でも本物だと脳が理解してしまえばそれは"ホンモノ"となる
「幻術、ねぇ…鬱陶しい」
すかさず距離を詰めてくるツナを軽く受け流しながら、小さく紅蓮は呟く
剣という武器の性質上、近接戦なら敵なしだが遠距離となると少々話が違ってくる
負けるとは一切思わないが―――とにかく、目障りだ
「…!」
変わった雰囲気から直感で止めなければいけないことを分かったのだろう、ツナが炎を纏わせた拳を向けるが――紅蓮相手に、焦り過ぎた
「遅ェよ、つまんねェ」
あっさりと受け流され、無防備な態勢になったツナに容赦なく蹴りつける
「ぐぅっ!!」
反射的に体を逸らせたのは奇跡的だった――まともに受けていれば、ツナの体は真っ二つになっていただろう
直撃を避けこそはしたがまともに蹴りを受けた形には相違はなく、そのままツナは吹っ飛ばされる
「っボス!!」
「余所見すんじゃねーよ、ここは戦場だぞ」
その冷たい声に意識を向けた時には、すでに紅蓮は大剣を投げるモーションを取っていた
紅蓮とクロームの間には距離はある、が――先程の力を見れば、彼にとっては無きに等しいとは分かっていた
――うごけない…!
向けられる混じり気のない殺意に、クロームは呼吸すら苦しくなってくる
「…っ!!」
反射的に目をつぶり、その来るであろう衝撃に体を強張らせた
「―――クローム!」
ドスンッ
。
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