悲しき詩 | ナノ




53



「んな構えるなって。取りあえず話を聞きに来ただけだし、ここでやりあうつもりはねーよ」


武器を構えるツナとクロームに笑いかけるが、それで警戒を解けるはずもない


「……愛結はどこだ」


グローブに炎を灯すツナに、紅蓮は笑みを崩さない


「さぁ?教えるわけねーだろ」


それよりも、とクロームを指差す紅蓮


「お前、骸?」


「……、」


「いや、でも違うよなーアイツ男だったし。お嬢さん、アンタ何?」


「……わたし、は」


「あ、名前とかそういう話じゃねーからな、クローム髑髏…いや凪というべきか?」


"凪"――捨てたはずの名前を呼ばれ、クロームは動揺を隠すことができず、目が泳ぐ


「ッハ、何動揺してんだよ、情報収集は当たり前だろ?」


「……あなたは、骸様の、何」


「ムクロサマ、ねぇ。俺の質問の答えがまだなんだけど?」


すっと、"篝火"をクロームに向ける


「お前は俺の問いかけに素直に答えればいいわけ。分かる?お嬢さん」


「――その前に俺の問いに答えてもらおうか、紅蓮」


ガァンッ


「……吐かせてみれば?ボンゴレさんよォ!」


剣と拳が交わり――そして、離れる


「力ずくは嫌いじゃねぇよ」


戦うつもりはなかったが、相手がその気なら話は別だ

クロームとツナが武器を構え直したのを見て、益々笑みを深くする


「精々俺を楽しませてくれよ?つーか詰まんなかったら死んでもらうだけだけど」


その発せられる圧力――否、殺気に押しつぶされそうになるが、それでもツナはそれに負けぬよう唇を噛みしめる


「さァ、楽しませてくれよボンゴレ!!」


その言葉を引き金に、ツナと紅蓮は同時に地を蹴った










「っあ、あいつら…む、むりだ、やめろ…っ」


その様子をただ見ていたユキエはガタガタと震えが止まらない体を抱きしめながら、小さく呟いた

千年伯爵と相対するアレンも見えるが、それよりも――あの男だけは、ダメだ

今のツナたちの実力では、紅蓮と戦うにはあまりにも、絶対的な力の差が開いているのを、ユキエははっきりと感じ取っていた




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