悲しき詩 | ナノ




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「ユキエ…!」


「うる、せー…ぞ、」


馬鹿にしたような言葉も、先程までの覇気はない


「く、そ…っあと、少しなのに……!!」


「、ユキエその扉ってどこに…!?」


クロームの声に、ユキエは震える手である一点を指差す

その指先をたどっていくと…かろうじて肉眼で見える、一際高い建物にある真っ赤な色の扉が目に映った


「あの赤い扉が、"江戸"に繋がるのですか!?」


「そ、う……っがあぁぁっ!!」


「っツナ!」


「――分かってる」


死ぬ気丸を飲みこんだツナは橙色の炎を額に灯らせ、おもむろにクロームを抱きかかえる


「ひゃ…!?」


「黙って、舌噛むよ」


思わず抗議の声をもらすクロームに構うことなく、ツナは例の赤い扉目指して走り出した

同じようにユキエを抱えたアレンもまた同様に走っている


「う、ぐぅ…っ、」


その最中もずっと、頭を押さえて苦しげな声をもらすユキエ

それに心配げな表情を浮かべるアレンだったが、ぐっとスピードをあげて扉へと急ぐ





ダダダダダ…





「っ見えた!!」


遠くに見えたあの赤い扉も目前へと近づいてきた

遠くから見た時には気付かなかったが、よくよく見ると白い紙らしきものが貼られているのが分かる


「はァ、っ…!、江戸への入り口、でースv…?」


扉の前までたどり着き、そこに書かれた文字を荒い呼吸を繰り返しながら読み上げたツナ


「、書かれてるこの絵、伯爵の似顔絵です…!」


緊迫感のない文字と絵に脱力しそうになるが、伯爵の絵が描かれているのならゴールで間違いなさそうだ

おおよそ人間だとは思えない不思議な風貌の似顔絵に、これが千年伯爵なのかとツナは見やる

抱きかかえていたクロームを降ろし、扉に手を触れる


「…、開けるよ」


コクリと頷いたクロームとアレンを確認し、ツナはそっと扉を開ける


「――、な…これは…!?」


がちゃりとあっけなく開けられた扉の先に広がっていたのは――何もかもが消えさったような、不自然に平らな土地

―――ここが、"江戸"…





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