悲しき詩 | ナノ




49



「いいか、オレが説明してやるからよーく聞けよ!」


エヘンと胸をはるユキエ


「ここは弟子が言った通り"方舟"っつー隔離された空間の中だ。扉がたくさんあるだろ?そのドア1つ1つ別の空間と繋がってるんだ」


だから勝手に開けるなよ、と釘をさされ今まさに開けようとしてたツナは慌てて手を離す


「もうちょっと歩けば"江戸"に繋がる扉があるから、ちと我慢して歩きな」


そう説明され、何の文句も言わずに一行は歩き出したのだが……





―――15分後


「弟子、さっさと歩け」


「アレンですから」





―――30分後


「…」


「……」





―――そして1時間が経った頃


「いい加減にしてください!」


最初に我慢できなくなったのはアレンだった


「ちょっと歩くとか言ってもう1時間も歩いているんですが!」


「はァ?オレ明確な時間伝えてねェし」


「だからと言って"ちょっと"が1時間だとは認められません!」


「弟子はせっかちだなー。文句言わず歩いてるツナたちを見習えよなー」


「論点をすり替えないでください!!」


文句言わず歩いてはいるが、思っていることはツナもクロームもアレンと全く同じだ


「うるさいなァでし、は、、」


言葉の途中で唐突に、ユキエはピキリと固まった


「…?ユキエ?どうしたの?」


一切の表情が抜け落ちた顔で立ち尽くしたかと思えば次の瞬間―――


「あ、あぁっ…ぐぅっ…!!」


その顔を苦悶に歪め、頭を押さえてその場に蹲ってしまった


「ちょ、ユキエ!?大丈夫!?」


「……っは、伯爵様が…呼んで、んだ……」


荒い呼吸を繰り返すユキエの額に、いつの間にか大きな星印が浮かび上がっている


「伯爵様が…呼んでんだ…江戸中の、アクマを……っ」


それはユキエたち改造アクマも例外ではなかった


「だ、いじょ…ぶ…・・だ、耐えれる…!」


ヨロヨロと立ち上がり、よろめきながらも前へと歩き出す




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