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「――――シルフ」
その声で、シルフの意識は"現実"へと浮上する
「、なんだ紅蓮さんですか。どうかしました?」
「進んでんのか?」
前置きもなく問われた内容は散々聞かされてきたもので、焦らすなよと内心思いつつも表には出さない
「進んではいますけど、まだ半分以下、な感じだと思います。複雑ですから」
何の違和感もなく"矛盾"が成り立っているせいでその"矛盾"を見つけ出すこと自体に手間がかかっている
だからこそ自分の精神を愛結と直接繋げ、矛盾した過去を消し正しく繋いでいくという地道な作業しか方法はなかった
しかも慎重にやれと耳にタコができるくらいしつこく言われているせいで余計に時間もかかる
「ってことはまだかかるか…」
「…言っておきますが、これ以上の時間短縮は無理ですからね」
腕を組み何かを考え込んでいる紅蓮にシルフは念押しの言葉を投げる
愛結が廃人同然になってもいいのなら可能ではあるが、それはこの目の前の男が許すわけもない
「分かってる。ちょうどダウンロードが終わった頃だと思っただけだ」
今で半分以下なら、このペースでいけば方舟が完全にダウンロード終わる頃には愛結もきっと――…
「悪ィな、宜しく頼むわ」
肩をすくめたシルフがまた作業を開始したのを見て、紅蓮はそっと部屋から出ていく
――バタン
「ハァ……長ェ」
苛立たしげに呟く紅蓮であったが、愛結の安全を最優先している分仕方がないということも分かっていた
急かしてもし何か一つでも彼女の身に異変が起きたら…自分たちは何の迷いもなくシルフを八つ裂きにするんだろうなぁ、なんて思いながら物思いにふけっていた時
――…―ピキィ…――
「…っ、?なんだ、今の…」
小さな耳鳴りがして紅蓮は顔をしかめる
すぐ治まったものの…やけに耳に残る耳鳴りだった
首をひねりながら大広間――"家族"がいるであろう部屋へと向かう
――ガチャ、
「おい、今の……って何でこんなに勢揃いなワケ?」
長子であるロードを除けばほぼ全員揃っている状況に目を丸くする紅蓮
「社長に呼び出されたんだよっ!」
「今オメーもアクマに呼びに行かせたんだよっ!ヒッ」
「かっわいそうにあのアクマ、今頃必死に探してるんじゃねーの?」
あのアクマ用無しだな―!なんて騒ぐジャスデビと、呑気に煙草をふかしているティキの言葉に、ふぅんと興味なさげに相槌を打つと空いている椅子へと腰かけた
。
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