悲しき詩 | ナノ




42



『――…、っ?』


「目が覚めましたか?」


『む、っくー…?』


起きたばかりでまだ頭が働いていないのか、ぼんやりした目を瞬かせる


『……あぁ、私途中で気を…』


「ずっと眠っていたので心配しましたよ」


『そっかぁ…ごめんね、もう大丈夫…』


そういえば…と周囲を見渡して首を傾げる


『みんなはどこに?なんだかやけに人がすくな、い……』


「……」


『……そ、っか』


人数が少ない理由を悟り、寂しげに小さく呟く

"レアモノ"が手に入ったといつも以上に興奮していたオトナたち

それが何なのかは分からなかったが……それが自分たちにとってイイモノだとはとても思えなかった


『なんだか……すごく、嫌な予感がするの…とてもこわい、なにかが起きそうで……』


このテの直感は、あまり外れたことはない

今まで感じた事ない不安感に少女の顔が曇るが……


「……、」


『あ、起きたの?』


一緒に戻ってこれた少年が目が覚めたのを見て、先程の顔が嘘だったかのように笑みを浮かべる


「……」


「なんらぴょん。相変わらず愛想のないヤツ」


『犬ちゃん』


そっぽを向いてしまった少年にどうしようかと考えていた時、


「……2人だけ、」


ぽつりと聞こえたのは、今まで聞いたことのない声色で……それが今まで一言も喋ったことがない彼のものだと理解できた時、少女は嬉しそうに顔を綻ばした


『うん、あたしとキミの2人だけ』


恐らく言葉が出たのは無意識だったのだろう、金色の少年は返事が返ってきたことに動揺したのか目を泳がせている

無表情の仮面が剥がれ、年相応の男の子といった様子に、ますます少女の顔が輝く


『ねぇ、喋ったついでに名前も教えてよーねぇ、ねぇねぇ!ねぇってばー』


「…………ハァ、」


逃げられないと悟ったのだろう、少年は煩いと言わんばかりに顔をしかめ、口を開いた


「俺の名前は―――……」







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