悲しき詩 | ナノ




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また、新たな"仲間"が増えた


『こんにちは、初めまして!』


「……」


少女が笑顔を浮かべて話しかけているのは、汚れからか少しくすんで見える金髪の少年


『名前はなんていうの?』


「……」


『あ、あたしはね愛結っていうの!こうやって書く、んだけど………』


床に自らの名前を書いてみせても、見向きもされない

まさに取りつく島もないといった様子に、すごすごと様子を見守っていた少年らの元へと戻っていく少女


「ほら!おれらが言っら通りらった!」


『う、うるさい!犬ちゃんなんて嫌いっ!』


「だからその呼び方やめろってなんらいも言ってるらろ!」


ギャーギャ言い争っている2人のやり取りに、藍色の少年は小さくため息をつく

今回の"新人"は恐ろしく無表情な子供だった

無表情・無関心・無気力の三拍子が揃っているのだから扱いにくい(実験には適しているのかもしれないが)

まだ一言も彼が言葉を発したところを見たことがない

例の如く仲良くなろうと話しかけた少女でも、彼の分厚い心の壁を開けることはできなかったようだ


「あぁいうタイプの人間には何言っても無駄だと思いますよ」


「同感…」


『うぅ…で、でも諦めないもん!むっくーだって私のこと無視してたけど、なかよくなったじゃん!あの子もきっとそうだもん!』


「…いい加減、その変な呼び方も変えてもらいたいところですが…」


こんな呼び方をするのはこの目の前の少女1人だけだ


『だ、だって…むっくーはむっくーだもん…』


「はいはい。もういい加減諦めてますけど。ねぇ、"ちーちゃん"?」


「……はぁ」


げんなりとしたその様子を見て楽しげにクフフと笑みを浮かべるが――


――カツーン カツーン …


『……っ、』


徐々に近づいてくる複数の足音

それは"悪夢"の訪れを意味するもので、部屋にいる子供たちはその音を敏感に聞き分けて体を強張らせる

それは少女も同様で…先程まで浮かべていた笑顔は一瞬で消え、震える手で少年の服をぎゅっと握りしめる


「……大丈夫ですから…」


ぎぃぃ、と鈍い音とたて――狂ってしまったオトナたちによって、ゆっくりと扉は開かれた




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