悲しき詩 | ナノ
39
オトナたちは、皆何かに取りつかれたかのように研究を続けていた
"ファミリー"のために――呪文のように呟きながら、犠牲しか生まない研究を続けていた
犠牲になるのは――いつも、幼い子供たちだった
『ひっく…っ、』
「愛結…」
今日も一人、"友達"が戻ってこなかった
比較的仲が良くてお互いに慰め合いながら生きてきたが――もう、それもできない
『むっくー…っ』
「今日だけですからね」
今日だけ、友達のために涙を流そう
そして今日流した涙の分だけ、明日は笑うために
自分にしがみつきながら泣いている少女の、その小さな体に目立つ包帯の白さに少年は眉をひそめる
彼女だけではない、ここにいる者全員……心にも体にも、沢山の傷を負っている
「……」
そっと、その震える体に手を伸ばす
涙なんて、とうの昔に奪われた
だから昨日まで一緒にいた人間がいなくなっても…そういうものだと現実を認識するだけで悲しいという感情はもう浮かんでこない
『…っ、ふ……っ』
だが、少女は違う
誰かのために泣いて、誰かのために笑う
強くもあるが、その分傷つきやすい繊細さも併せ持つ
だからこそ、不安定さが目に付き、不安仁なるのだ
「いーかげん泣きやむぴょん!」
「……うるさいよ」
『あ、あたし、だって…っなきやもうと……!』
今はいい。自分たちがいれば大丈夫…支えていける
だが、もし誰か一人でも欠けてしまったら―――この少女は、また笑えるのだろうか?
「……ほら、3人とも。早く寝ますよ」
そんな最悪の未来から目を逸らし、少年は薄く笑みを浮かべる
それは、このままここに居続ければいつか必ず訪れる、最悪の未来だ
『、うん!』
その前に、手を打たなければならない―――それも早急に
。
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