37 記憶のトビラ
「――――あーむかつく」
ドガァン
「ちょっとぉ紅蓮〜?イラついてるからって物に当たらないでよねぇ」
殴られ穴が開いた壁を見て、ロードがため息をつく
「しょうがないでしょ〜愛結姉の精神プロテクトは僕たちじゃ解けないんだからさぁ」
「そうそう。俺たちじゃイノセンスを破壊することしかできねーんだし、大人しくシルフに任せておけって」
優雅な所作で紅茶を飲んでいるティキはいつも通りの表情だ
「…んなことぐらい俺だって分かってるっつーの」
ドサリと乱暴に机に腰かけ、苛立つ気持ちを静めようと冷めた紅茶を一気に飲み干す
行儀悪い〜とロードに言われてもどこ吹く風で気にする様子はない
「ってか紅蓮、お前そのイノセンスいつまで使う気なんだ?」
「ん?あぁ、コレ?そう言われれば別にコレ使う義理はもうないか」
ティキに問われ、長年使ってきたイノセンス"篝火"を見る
その目に、エクソシストとしての感情は一片たりとも見当たらない
「今回ダウンロードが無事完了したら壊そっかな。そん時にはシルフの仕事も終わってるだろ」
「ダウンロードと言えば…ロード、お前こんなところで遊んでていいわけ?千年公に怒られるぞ?」
チラリとロードを見れば、不満げに頬を膨らませる
「なにさティッキー。僕を過労死させる気〜?」
「はいはい。つまり休憩中ってことね」
適当に流され益々不満げな表情を浮かべるロードは、紅蓮が黙り込んで空となったティーカップを眺めているのに気づき首を傾げる
「紅蓮〜?考え事ぉ?」
「ん?あぁ……愛結を取り返しにくるのかなーって思ってさ」
思い浮かぶのは、ススキ色の髪を持つ少年と、"似ている"少女
楽しみだと小さく笑みを浮かべると、珍しいとばかりにロードとティキが顔を見合わせる
「珍しいな、お前が愛結以外の人間にキョーミ持つなんて」
「すっごく気に入ってるんだねぇ、ソイツらのことぉ」
そんな揶揄するかのような2人の言葉に何も言わず、紅蓮はただ楽しげに、嗤う
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