悲しき詩 | ナノ




36





「……お仲間はいつ"江戸"に到着したのですか?」


ツナらのやり取りに口を挟むことはなく、アレンはユキエに問いかけを投げる

立ち止まりそうになったとき、背中を押してくれるのは仲間の存在だと身に染みて分かっているアレンは、彼らのやり取りに少しだけ眩しげに目を細めた

―――困難な任務に向かう時も…後ろで見送ってくれるコムイたちと、共に歩く"仲間"がいてくれたから、震えそうな足でも前へ動かすことができた


「先程これ以上遅れるとマズいと言っていましたよね?リナリーたちは既に先行しているということでしょう」


<そうだなー大よそ1週間ぐらい前、というところか。だけどアイツ、ドジやらかしてポイント間違えたみてーで、かなり遠い場所からスタートしてるからなァ…実際は目的地への到着時間にそう大きな遅れはないはずだ>


改造アクマ同士、お互いの場所をなんとなく感じ取れるらしく、今日出発すればギリギリ間に合うらしい


<…オイ、オマエ…えっと、ツナ、だったか?>


「えっ、あ、はい!?」


突然話しかけられ、ツナは一拍遅れてコクコクと頷く


<出発は日が沈んでから…時間でいうと20時。それまでに準備を終わらせておけよ>


「う、うん」


<さて…エクソシストはお前と弟子の2人だけか?>


「弟子ではなくアレンです。エクソシストは僕たち2人しかいないので、これで全員かと――」


「――いいえ、私も行く」


突然第三者の声が割り込み、慌てて振り返り……そこにいた人物に、目を見開いた


「ク、クローム!?な、なんでここに…!」


ドアに背を預けた格好でこちらを見ているのは先日別れたクローム本人


「ボスのお母さんに、入れてもらったの…話も殆ど聞いてた。私も、行く」


「行くって…そんなの無理だよ!話聞いてたなら分かるでしょ!?すごく危険なのに…!!」


それにエクソシストであるのは骸であって、クロームはその力を少し使えるだけの普通の女の子のはず

そんな危険な場所に行かせるなんてできないとツナは止めようとするが、クロームの意思は変わらない


「骸様が行きたいって行ってたから…それに、本当に危なくなったら、骸様が助けてくれる…と思うし…」


「思うって…そんな不確かな状態じゃ、」


<ならメンバーはオレとツナと弟子、そして女でいいんだな?>


「ちょっと!?何勝手に決めてんの!?」


冗談じゃないとばかりに叫べば、クロームとユキエから面倒くさそうな目で見られて少し怯むも、その無言の圧力にも負けずにツナは声を絞り出す


「だ、だって…危ないのに…」


<いつまでグダグタ言ってんだ、ツナ。女は戦えるって言ってるし、覚悟も決めたんだ。オメーがこれ以上口出しする権利はねーぞ>


そこまで言われてしまえば、もうツナも黙るしかない


<…よし。ならオレは準備してくるか。出発時刻間違えんじゃねーぞ!20時だからな、20時!>


話は纏まったと、時間をくどいくらい念押しし、現れた時と同じように窓から出て行った

それを引き金に、クロームや獄寺たちも帰っていく


「見送りに来ますから!!」


「ハ、ハハ…ありがとう獄寺くん…」


―――今夜、全てが動き出す




希望と不安を胸に

後ろに道はない



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