悲しき詩 | ナノ




35



<おーい、戻ってこい弟子ー。話進めるぞー>


「あんのクソ師匠…会ったら絶対文句言ってやる…」


ユキエの言葉に、この先待つ借金返済ライフから目を逸らし現実世界へと戻ってくるアレン


<オメーの仲間のところにはサチコが向かってる。で、川村と江戸で落ちあう計画だ>


だけど、と声に真剣味が増す


<"江戸"はオメーらが思ってる以上に過酷な国だ。アクマしかいない、アクマに支配された閉ざされた空間で…生きて帰ってこれる保証はどこにもない。ここで退きさがるのも"勇気"だとオレは思う>


告げられる"現実"に、ツナは息をのむ


<足手まといはいらねぇとクロスは言った。こっからの戦いはそれ程過酷だということだ>


足手まとい――それは、エクソシストと自覚してまだ日の浅いツナにとっては耳に痛い言葉だった

アレンら慣れた人間でも辛い戦場に行って、足手まといにならない自信はないけれど―――


「……俺は、行きたい。愛結ちゃんを助けにいかないと」


――それでも、諦めるなんてできるわけがなかった


「もちろん僕も。ここで退きさがるわけにはいきません」


ツナとアレンの表情を見て、"本気"だと理解したユキエはそうか、とただ一言だけ呟いた

死地といっても過言ではない場所に赴く覚悟を決めた人間に、これ以上説得するつもりはなかった


<出発は今夜だ。これ以上の遅れは厳しい>


「こ、今夜!?」


突然迫ったタイムリミットにツナは驚きの声を上げる


「そ、そんな急は…!母さんたちにも説明しなきゃだし、」


「…行ってください、10代目」


落ち着いた様子で声をかけたのは、今まで黙って聞いていた獄寺だった


「コイツの言う通り早く行動するのがいいと思います。何もできないのが悔しいですが……皆への説明は俺がします」


「獄寺の言う通りだ、心配するなツナ。ママンたちのことは任せろ」


トン、と山本の肩に乗った、いつもと変わらぬ様子のリボーンを見て、徐々に気持ちが落ち着いていく


「そーだぜツナ!こっちのことは何も心配しなくていいからな!」


「みんな……、」


強張っていた表情が解け、ツナは彼らしい、柔らかい笑みを浮かべありがとう、と小さく呟く

自分を信じてくれる仲間たちのためにも、必ず愛結と共に、生きて帰ろう――そう、固く誓った




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