悲しき詩 | ナノ




34



「10代目!?一体どうされ――…」


突然のその悲鳴に忠犬獄寺がいち早く反応するも、ツナは窓を指差したまま固まって動けない

そのただならぬ様子に、皆恐る恐る窓に視線を向け――…同じく固まることとなる


ジ―――――……


「「!?」」


窓にへばりついてこちらを見ていたのは……不思議なイキモノだった


<お、やーっと気付いたか!オレ、ずーっとココにいたのにオメーら気付いてくれねーからどうしよーかと思ったっての!>


「しゃ、しゃ喋った!?」


<んぁ?喋っちゃ悪いんかよ!>


うんどこしょ、と勝手に窓から入ってくるソレは、強いて言うのなら……巨大なぬいぐるみのクマ、だろうか

自分たちとそう背丈の変わらない不気味なソレに、驚いて言葉が出てこない


<話は聞いてたけどさー、確かに悪くはねぇけど時間がかかりすぎだ。オレはそれに付き合ってられるほどヒマじゃねーんだ>


「ちょ、ちょっと…!?」


機械染みた、男とも女ともいえぬ声色で語られたそれに、ツナが戸惑いの声をあげるのと―――イノセンスを発動したアレンの爪が、ソレの首元に突き付けられたのはほぼ同時だった


「ア、アレン!?」


「……アクマが一体何の真似ですか」


平坦な声色で告げられたその言葉に、ツナは目を見開くが、イノセンスを突きつけられているソレ――アクマは、ニヤリと笑みを浮かべる


<その爪…オメーがクロスの弟子か。オレはオメーらの敵じゃねぇ。クロスから道案内人として派遣されたんだ!>


今まで見てきたアクマとは明らかに様子の違う、理性的なそれにアレンは警戒するも、破壊しようとはせず様子を見守る


<オレの名前はユキエ、クロスによって造りかえられた改造アクマだぜ!>


「ユ、ユキエ…」


「なんていうか…人間っぽい名前っすね…」


その妙に人間っぽい名前に思わず言葉が漏れるツナと獄寺


<何言ってんだ!オレの仲間にはサチコと川村ってヤツもいるんだぞ!ユキエなんて可愛いもんじゃねーか!文句なら付けたクロスに言え!>


「ちょっと待ってください、先程から何故師匠の名前が…」


<あ!そうだ、忘れるところだった、オメー宛に伝言を預かってんだ、クロスから>


―――お師匠様の借金ぐれぇ弟子であるテメェがキッチリ払えや


「「……」」


言葉を失うとはこのことで…あんまりなその伝言に、ツナはそっとアレンの顔色を伺う


「……す、すごい師匠なんだね、アレ……」


「しゃっきん……ふふ…しゃっきん…」


「ひっ」


虚ろな目でブツブツと"しゃっきん"と呟くアレンの姿が地味に恐ろしく、ツナは思わず一歩距離を取った




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