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「―――"江戸、鎖国という閉ざされた外交の中200年以上続いた時代"…」
だから何なんだと、役に立たないことしか書かれていない本を破り捨てたくなるも、その衝動を抑えているのは獄寺だ
どの書籍を見ても全て同じことしか書かれていない――自分が必要としているのはこんな薄っぺらい情報ではない
「はぁ…」
文字の見過ぎで疲れた目をおさえる
戦闘面で役に立たないと言うのなら、せめて後方支援ぐらいはと思って色々調べているのだが…成果は思わしくない
山本や笹川兄は調べものには不向きな性格だし、黒曜組は何を考えているのか不明
自然と自分しかいないと張り切って調べてはいたのだが……
「あ――やめだやめ!」
持っていた本を投げ捨てて思考を切り替える
調べても出てこない以上、推理し考えるしかない
「"江戸"…」
アレンの言うことが全て本当だと言う仮定した上で仮説を展開させる
この日本に"江戸"と呼ばれる場所があるというのなら、それは自分たちの知る日本であって日本ではない、"別の場所"に存在するということだろう
恐らく"なにか"が日本と江戸を繋いでいると思われる。その"なにか"がどんなモノなのか、想像もつかないが……
「ん?いや、待てよ……」
アレンの口ぶりから察するに、"江戸"にはアクマが大量に存在することは想像できる
そしてこの並盛にも、他よりもアクマが多いと確か彼女が言っていたはず……
「…アクマの流れを探れれば、もしかしたら…!」
アレンには人間とアクマを見分ける目も持っている
この仮説をツナたちに知らせるため、獄寺は家を飛び出した
―――竹寿司
山本は父の前で、深く頭を下げていた
姉がいなくなった理由、婚約者だった波留のこと、愛結のこと――全部説明して、父親に頭を下げる
「…っ俺、目の前で姉ちゃんがいなくなっちまったのに、何もできなかった…!」
悔しげに拳を握る息子に、父親は静かに口を開く
「……知ってるよ。那美が元々いなくなっていたことも、全部。お前が傷だらけになって帰ってきた日…赤髪の子が言いにきたからな」
目を瞑れば鮮明に思い出す――自分が殺したのだと言いにきた少女の目の暗さを
「事情があっただろうが何だろうが、俺は父親として許すことはできねぇ。それはこの先ずっとだ……だがな、武」
固い顔をしている息子に、小さく笑みを作る
「アイツ、那美のことは忘れてやるなよ」
「……んなこと、分かってるよ」
お菓子を作らせたら旨かったのに、他の料理はてんでダメだった姉
彼女に作ってもらったちらし寿司は…とても食べられたものではなかった
他にもたくさんの思い出がある
「そうだよな…うん、そうだな!」
勢いよく立ち上がるその表情は、少しだけ憑き物が落ちたような、スッキリしたものだ
「俺、姉ちゃんも波留兄も大好きだっ」
何だか今、とてもツナにこの気持ちを伝えたい
上手くは言えないけれど…ツナなら分かってくれるきがするんだ
ずっと愛結を信じて、彼女を助けると迷いなく言ったツナなら
「親父、ちょっと出かけてくる!」
――きっと、愛結とまた笑いあえる日がくる
山本は小さく笑うとそのままツナの家へと走っていった
。
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