悲しき詩 | ナノ




30 希望と不安を胸に




――ガキィッ


「……っ、」


「少し休憩を取りましょうか、ツナ」


アレンのその言葉に、ツナの額に灯っていた橙色の炎――死ぬ気の炎が消える

それと同時にガラリと雰囲気も変わり、ツナはペタリとその場に座り込んだ


「つ、疲れた…アレン、やっぱり強いね…」


「そんな大した差ではありませんよ。きっとすぐ追いつかれると思います」


「……」


小さな怪我をあちこちに負った状態のツナにしてみれば涼しげなアレンの言葉は謙虚を通り越して嫌味にすら聞こえる


「だらしねーな、ツナ」


近くで見ていただけのリボーンには言われたくはないが、そう言われてしまう程実力差はハッキリとしていた

明らかに手加減しているアレンに対し、超死ぬ気モードで真剣にやっても負った生傷の差は一目瞭然だった


「仕方がありませんよ、対人ではなく対アクマとの戦闘は慣れない部分も多いと思います」


慰めの言葉にハハ、と力ない笑みがこぼれる

事情を説明したあの日から、ツナとアレンの修行は行われている

獄寺たちは"江戸"について調べるといって譲らなかったため、今は彼らに謎解きは任せて少しでも強くなるために日々努力をしていた

絶対に負けるわけにはいかない戦いをしているのは、自分たちだけではない


「おい、休んだら修行再開するぞ」


「え!?もう!?―――わ、分かった!分かったから銃向けないで!」


諦めたようにため息をついた後、ゴクリとバジルにもらった死ぬ気弾を飲みこむ

途端ツナの額に橙色の炎が灯り、雰囲気が一変する


「宜しく頼む、アレン」


「はい。では、行きます…!」


ガキィッ、と鈍い音を立てて互いのイノセンスがぶつかり合う音が響き、修行は再開された




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