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『―――ぞう、お…?』
紅蓮が口にしたそれを、掠れた声で反復する愛結
黒く染まった、紅蓮なのに"紅蓮"ではない人
見下ろす愛結と見上げる紅蓮の視線が交わる
『な、んで……だって、だって紅蓮、エクソシストじゃない…』
「俺はエクソシストである以前に、ノアだ。ノアとイノセンスを完全に分けて力を使い分けてるんだ。まァノアの力は半分以上抑えられてるんだけど」
『そ、そんなことありえるわけ、』
「できるから、俺は"特殊"なんだ――憎悪のメモリーは、そういうものだから」
『…っ、』
これ以上は聞きたくないとばかりに、愛結は紅蓮を距離を取った
そんな彼女を、どこか憐みさえ感じさせる、優しい眼差しで見つめる
「俺は憎悪、ロードは夢、ジャスデビは絆、スキンは怒。ティキは快楽、ルル=ベル…あの猫は色を司るノアだ」
『…っやめて…、』
「全員、お前たちエクソシストと敵対してきたノアだ。あ、シルフは違うからな」
『っやだ、聞きたくない…っ』
耳を塞ぎ、これ以上聞きたくないと拒絶する愛結に構うことなく、彼女が知りたくないであろう事実を語る紅蓮
「余計なことしやがったアイツを殺してやりたいのは山々だが…俺たちの"計画"にはアレのイノセンスが必要だからなぁ」
『やめてっ!!もう、やめて…っお願いだから…!』
涙の滲む悲鳴に、口を閉ざす
『ねぇ、何で?私たち、仲間じゃなかったの?今までずっと、ずっと敵だったの?』
懇願、だった
冗談だよ、そう言って欲しくて紅蓮にすがりつく愛結
―――全て真実なのだと認めてしまえば、今までの全てが崩れてしまう
『信じてたのは…私、だけだったの…?』
暗い絶望の色を映した声に、しかし紅蓮は優しく、今までと同じように笑う
そのアンバランスさに、愛結は目を見開くが―――首に軽い衝撃を感じ、急激に視界が狭まってくる
『ぐ、れ……』
「……次目を覚ましたら、全部思い出す。そうすれば、お前も"家族"になれるさ」
愛してる、愛結
その言葉を最後に、愛結の視界は漆黒に染まった
。
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