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…――ガチャリ、
「おーっす愛結、メシ持ってきたぞー、っと……?」
シルフが去って数時間後、愛結にご飯を持ってきた紅蓮は部屋に入るなりその違和感に首を傾げる
いつもならば何かしらの反応を示す彼女が、自分に背を向けてベットに座り込んだままピクリとも反応しない
「愛結ー?」
体調でも崩したのかと、持ってきた料理を机の上に置いて愛結に近づいた
触れるか否かのところまで手を伸ばした時――急にその手を引かれ、油断しきっていた紅蓮はそのままベットに倒れこむ形となった
「いって…、なァおいどうしたんだ?」
逃がさないとばかりに覆いかぶさった愛結の目が、暗く淀んでいるのを見て文句の代わりに気遣う言葉が口に出る
『………ぐれん、』
その声は震えていて、一体何が彼女をここまで変えてしまったのか――紅蓮がいくら考えてもそれらしい原因は思い当たらない
『ねぇ、紅蓮……本当、なの…?』
今にも泣き出しそうな表情で、ギュッと紅蓮の服を掴む愛結
『ねぇ、嘘だよね……違うよね、紅蓮たちが、ノアだって、そんなの嘘、だよね?』
「――…!お前、それをどこで…」
絶対に知られないよう、会うときは全員"白"の状態だったしアクマもノアのことも一切出さないよう周知徹底させてきた
だからこそ、先程までは愛結は何も知らないまま、ロードたちと話していたというのに、一体どうして――…
どう言葉を返そうか考え込む紅蓮を見下ろし、愛結は悟らざるを得なかった
『……否定、しないんだ。シルフが言ってたこと、本当なんだね……』
―――あのクズ、今すぐにでも殺してやりてェ
余計なことをしてくれた邪魔者に思わず舌打ちがこぼれる
もう確信を持ってしまった愛結を誤魔化すのは無理だろう
「――気付かなきゃ、もう少し夢見ていられたってのにさ」
見下ろす愛結の頬に、そっと手を触れる
白い、もう見慣れてしまった肌の色―――だが、それは徐々に浸食されていく
『……!』
「俺はノアの一族の一員。"憎悪"のメモリーを持つ、ノアだ」
。
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