悲しき詩 | ナノ




25



「本当に何にも知らないんだね、キミ。呑気に誰かが助けてくれるのを待ってるの?紅蓮さんたちが"敵ではない"とでも本気で思ってたり?」


クスクス笑うその笑みは人を苛立たせる種類のもので、不快感に顔をしかめる愛結


「なんであの人たちが隠してるのか知らないけどさ……そんなんだから敵に、ノアに囚われるんだよ、"泣き虫"ちゃん?」


ノアに―――その言葉がすぐには理解できない

まるで、ロードやティキたちが、紅蓮が"ノア"だと言わんばかりの言葉に困惑が隠せない


『ま、待って……ノアって、そんなわけ……』


「ははっイイ顔〜!でもこれは残念ながら本当なんだよなぁ。高井愛結はノアに捕まってるっていうのは事実」


『そ、それなら!仮に、そうだとしても…!紅蓮はどうなのよ!それにアンタも、何でノア側に…!エクソシストなのにイノセンスを裏切ったら"咎落ち"が起こるはず…!』


「あ、咎落ちで思い出した。アンタに一つカナシイお知らせがあったんだったわ―――スーマン・ダーク、咎落ちして死んじゃったんだー」


『……、』


突然の訃報に言葉も出ない

あの地獄だった日々で、少しだけ気を使ってくれた優しいエクソシスト

私にも娘がいるんだ、そういって悲しげな表情で頭を撫でてくれたあの温もりを忘れたりはしない

そのスーマンが、何故咎落ちに―――…


「ノアに、ティキ・ミック卿に命乞いしちゃったんだってー。エクソシストなのに戦うことを放棄したからジ・エンド!そんな足手まとい死んで当然だと思わない?むしろクズが一人減ってラッキーみたいな?」


『アンタ…!!』


心ない酷い暴言にカッとなり思わずシルフの胸ぐらをつかみあげる


『言っていいことと悪いことの区別ぐらいつけなさい…!これ以上死んだ仲間を貶める発言を続けるのなら許さないわよ…!!』


「ふん。何勝手に熱くなってんの。手ェ離してよ」


左手で愛結の手を振り払うシルフ


「あの"泣き虫"がこうなるなんてねー」


『…なに、その"泣き虫"って』


「覚えてないなら別にいいよ。それは僕の仕事だし?紅蓮さんからの仕事だもん、ちゃんとやるよ」


言いたいことだけ言うとそのままドアへと向かう


「あ、そうそう。安心しなよ、僕も紅蓮さんも"咎落ち"なんてしないからさ」


『……なんで、』


「僕と紅蓮さんはある意味特別だからね〜。イノセンスを裏切る程の義理はないというか…僕も紅蓮さんも別にアクマを殺す役目自体を放棄したわけでもないし?」


――じゃあね、無力な高井愛結さん

にやりと、胸やけしそうな笑みを残して、ばたりと扉は閉められた

残された愛結は突然降ってわいてきた、真偽が分からない情報で頭がパンクしそうで――震える声で、呟いた


『………、うそ…だよ、ね……?』


ロードたちや、紅蓮がノアだなんて、ずっと私を騙していただなんて、嘘だよね……?





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