悲しき詩 | ナノ




22



「クローム!」


「大丈夫だぞ沢田。気を失っているだけだ」


近くにいた了平が咄嗟に抱き留めたお蔭で怪我もなさそうで安堵するも、愛結に関してまた謎が増えたと頭を抱える

そしてそれはアレンもまったく同じで、思いがけない形で巻き込まれてしまっている


「エクソシストの、実験…?」


黒の教団に来てまだそれ程年数が経っていないアレンにとって、この実験などのワードは初めて耳にすることだった


「……おい、お前」


深く考え込んでいたアレンが反射的に顔をあげると、こちらをジッと見ている犬と千種と目が合って小さく息を呑む

先程のクロームの…否、骸の話が真実ならば、彼らは――


「……俺らは…おまえらエクソシストのために"ギセイ"らった」


「"泣き虫"と、骸様は運よく成功して、運よく助かっただけ…」


「犬!千種!」


ツナの制止の声にも反応することなく、ただただ真っ直ぐにアレンだけを見つめている


「マフィアも、教団も、エクソシストも…みんなだいっきらいぴょん…」


いつも騒がしい犬の発した、静かな口調で言われたその言葉がアレンに突き刺さる

違うとも弁明もできず唇を噛みしめるアレンをチラリと見た後未練はないとばかりにここから立ち去ろうとする2人


「おい待てテメェら!」


「うるさい。俺らは高井愛結が本当に"泣き虫"なら手をかす。でもおまえらとなれあうつもりはないぴょん」


「…行くよ、犬」


そのまま本当に出て行こうとする、が…


「ってクロームは!?」


「あ。忘れれた」


「めんど…」


ツナに言われるまで本気で忘れてたみたいだが、何だかんだ言いながらも千種がクロームを(持ち方は雑ながらも)担ぎ上げる

若干クロームの顔が苦しげに歪んだ気がするが……それを指摘するよりも早く、2人は部屋から出て行った

ぱたん、と扉の閉まる音が小さく響いた




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