悲しき詩 | ナノ




21



「え、実験…?一体なんの話か、全く分からないのですが…」


首を傾げるアレンの表情に嘘は見えない

それに対しクロームが何か発するより前に、リボーンが口を挟んだ


「おい待て骸。その"実験"というのは…あのエストラーネオファミリーが行っていた人体実験のことか?」


"エストラーネオファミリー"―――その言葉に犬と千種はピクリと反応する

彼らにとって、因縁深いマフィアの名前だ


「"その通りです。実際に僕はあの場所で六道輪廻を手に入れました―――地獄のような実験の末に"」


幼少期に深く刻まれた傷はそう簡単に癒えるものではない


「"犬、千種。覚えていませんか?肩までの赤髪に青色の瞳を持つ女の子を"」


「赤い髪…?」


「青ひ目……」


「"犬ちゃん、ちーちゃんと呼ばれていましたね、確か"」


「「あ」」


その呼び方で、2人の脳裏に一人の少女が浮かんだ


「「"泣き虫"だ」」


名前は忘れてしまったが、すぐ泣くから"泣き虫"と呼ばれていた少女

骸が組織を壊滅させた日に姿を消したのを思い出したが――


「"あぁ、お前たちはそう呼んでいましたね。その"泣き虫"の名前、覚えていますか?"」


名前まではどうしても思い出せず、首を横に振る2人

それらを見て、骸はゆっくりとその名を口にした


「"愛結ですよ。"泣き虫"の名前は高井愛結です"」


予想だにしていなかった名前に、ツナは言葉を発することしらできずただ固まった

その名前は、とてもよく知ってるものだった


「"クフフ…ボンゴレも知ってますよね?この名前の少女を。えぇ、あなた方と一緒にいた彼女は確かに、僕たちと一緒にあの地獄の中にいたのですよ"」


「しかし骸様…確かに、"泣き虫"と高井愛結は似てます。けれど……瞳の色が、」


愛結の瞳は空色で、"泣き虫"だったあの子の瞳は――透き通るような、青


「"そう、それに彼女は僕たちのこと何一つ"覚えていない"……実験場にいたはずの時間は、教団にいたことになっている"……、っ…」


集中力を使うのだろう、クロームの体力が限界に近づいてきた


「…、"これだけ、言いたかったんです…教団などに…彼女は、渡しません…から…"……む、くろ様…」


最後に骸の名を口にして、限界を迎えたクロームはその場に倒れこんだ




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