殿方達と恋をする | ナノ







ふと部屋を覗く


その部屋の縁側には先程から探していた娘、夏姫がいた



縁側に座り唄っている


先程から聴こえていた声は夏姫のものだったのか、三成は耳を傾け聴いていたが途中で止まってしまった


どうしたのかと部屋をのぞけば夏姫は三成を見ていたのだ


それに少し、本の少しだけ驚いた三成は小さく息を呑んだ


『何方かと思えば、ふふふ、石田様でしたか』


ふわりと笑うその表情はやはり、とても美しい


柄にもなく三成はそう思った



『如何なさいました?今は皆、無礼講でお酒を…』


「貴様を探していた」


『私を?』


まあ、お入りください。と部屋に招かれ、夏姫の隣に腰を掛ける


隣といっても、ひと一人分空いているのだが…



『私に何かご用ですか?』



そう言われた三成は困った


なんせ自分は家康たちにただ着いてきただけなのだから


話す内容も、ましてや彼女に用はない


ただ、歌声に引かれて自然とここへやって来たようなものだ


しかし、答えを出すまえに静寂は破られた


『先程の歌、聴かれていましたか』


「…ああ、……った…」


『え?』


最後の方が聞き取れず、問直す


すると今度は勢いよく立ち上がりこう言った


「歌声が綺麗だったと言ったのだ!!何度も言わせるな!!」


『まあ』


その言葉にキョトンとした夏姫だが、それはすぐに笑顔に戻った



『ありがとうございます』


「…フンッ…」


もう一度座り直す



『この歌は"陽溜まり"というんです。昔、母様に教えてもらったんです』


遠くを見つめる横顔は何処か儚い


そんな彼女にかける言葉は無く、ただ黙っている三成


静寂が二人の間に流れる



「…貴さm「ここにいたのか夏姫殿!」


どうも落ち着かない三成は言葉を発しようとした時、それは現れた



ニコニコと人懐っこい笑顔が眩しい人


「…家康ゥ!」



そう、徳川家康である


「三成がいなくなって驚いたから探してたんだぞ?そしたらまさかここにいたなんて…」


珍しいな、と一言付け足し、またあの笑顔でふたりを見た


『あなたは…徳川様…でしたっけ』


「ああ、だがその徳川様っていうのはその…なんだか慣れないな、家康と呼んでくれないか?」


「なっ…貴様!」


はて、家康の人懐っこいその性格が発揮され、早くも打ち解けたようです


それを見た三成は何故か怒っている


「なんだ、三成も名前で呼んで欲しいならそういえばいいじゃないか」


「誰がそんなことを言った!だいた貴様はっ――…」



『三成、家康』





凛とした声が部屋に響いた


その声に、ふたりはしばし固まっていた



『…あ、様ってつけたほうがよろしかったですか?』


「…いや、いい、そのままでいいよ」


ふわりと笑う彼女に家康もそれ相応の笑顔で返した



一方の三成は未だ固まったまま



夏姫は三成の顔を覗き込みどうしたのかと問えば彼は意識を取り戻したのか飛び退いた



「い、いきなり現れるな!!」


『そんな、私は…』


「ははは、気にするな夏姫、照れているだけだ」


「誰が照れるか!!」


『ふふふ、おふたりはとても仲がよろしいのですね』


「「そうだ!/違う!!」」



終始、彼女はひだまりのような笑顔を絶やすことはなかった







[*前] [次#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -