私のヒーローアカデミア




 春、始まりの季節。

 高校生活初日。わくわくし過ぎて目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。うん、遠足当日の小学生かな?今日から高校生だというのに少しだけ恥ずかしい。

 一人暮らしの新居からこの学校までどのくらいの時間がかかるかわからなかったから、大分余裕を持って家を出た。そうしたら想像以上に早く着いてしまって、職員室に顔を出そうかと思ったけどこんな早い時間じゃ先生方もほとんどいないだろう。教室にも誰もいなくて暇だったから、少しだけ眠ったんだ。

 ……本当に少しだけ眠ったつもりだった。なのに教室が賑やかだと思って目を覚ませば、そこにはもう生徒も先生も揃っていて。うわあ完全に寝過ごしたなあと少し後悔する。クラスメイトとのファーストコンタクトがないって、結構つらいかもしれない。

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 あーイレイザーヘッドが担任なのかーと半分寝ぼけながら思っていたら目が合った。えっ、なんか露骨に溜息つかれた気がする!傷つく!

 そういえばイレイザーヘッドじゃなくて"相澤先生"って呼ばなきゃいけないんだったっけ。慣れないなあ、気をつけなきゃ。

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」

 体操着の出し方については誰も突っ込まないのかな。というか皆ぽかんとしてる。イレイザーヘッドは先生っぽくないし、それでかなあ。

 教室内をきょろきょろと見回していると、懐かしいツンツン頭を見つけて一気に目が覚めた。面影しかない後頭部……これはひょっとすると、ひょっとするかも!

 クラス中がざわめきながらも動きだしたところで、その人物に突撃する。

「かっちゃん?やっぱりかっちゃんだ!!」
「あ?」
「わー!同じクラスだったんだねえ!」

 思った通りの人物だと確信すると、今度は物理的に突撃。記憶にあるよりも随分と成長したその人に、半ば突進するように抱きついた。彼の懐かしいにおいに胸が踊る。ああ、本当に、かっちゃんだ。
 
「は?し……?」
「しだよ、久しぶり!」
「……はァァ!?おまっ、なんでこんなとこいんだよ!!あ"!?同じクラスっつったか今!?」
「相変わらず声おっきいねえ」

 ずっとぽかーんとしていたかっちゃんが思い出したように叫んだ。うん、この距離でその音量は結構きついよ?とりあえず落ち着いてねーと宥めつつ、身体を離してちゃんと顔を見る。ああ、めちゃくちゃ眉間に皺寄ってるよ。かっちゃんだ。本当にかっちゃんだ。これ思うの何回目だろう。かっちゃんが少し落ち着いた声で「……本当にしだ」って呟いているから、お互いさまっぽい。

「かっちゃんは絶対ココだと思ったから、来ちゃった」
「てめぇ、雄英受かってんなら連絡くらい寄越せよクソが」
「あれ?言ってなかったっけ」
「言ってねーよバカ!!!言えよ!!」
「しちゃん!?!?」
「えーっ!!!いずくん!?!?」
「お前ら騒いでないではやく行け」

 再会を喜んでいたらイレイザーヘッドにチョップされたので渋々更衣室へ急ぐ。

 かっちゃんはいるだろうと思っていたし、二分の一の確率で同じクラスになれて良かった。けど、えっ、いずくん?いずくんだよねあれ?あのモサモサ頭はいずくんだよね?間違いないよね?えっここヒーロー科だよね?雄英ヒーロー科だよね?うわああいずくん受かったのかすごいなあ!!!!

 更衣室でクラスメイト達からすごく視線を感じたけど、話しかけられることはなく。私はといえばかわいらしい子が多くて嬉しいなあと緩む頬を抑えもせずグラウンドへ向かった。途中でまたあのツンツン頭、基かっちゃんを見つけたので駆け寄る。話していると「お前本当に雄英受けたんだな」としみじみ言われた。逆に私が他にどこを受けるというんだろう。……いやまあかっちゃんには言ってないけど、色んな意味で。

「同じクラス嬉しいなあ!またよろしくね」
「おう」
「でもまさかいずくんもいるとは思ってなかったなー。無個性なのに頑張ったんだねえ、すごいねえ」
「…………」
「また三人一緒だね」

 お?眉間の皺がすごい。うーん……かっちゃんといずくん、まだ仲悪いのかなあ。悲しいし、寂しいな。

 でも、やっぱり私は。

「なんか、嬉しいねえ」
「……そーかよ」

 ぐん、と頭を押さえ付けられたと思えば、すぐにぐしゃぐしゃと乱暴に撫でられる。ちょっと機嫌直ったみたいだ。ああ、この感じも懐かしい。変わらないなあ、嬉しいなあ。

「つーかもっと早く声かけろよ」
「早く着きすぎちゃってさっきまで寝てたんだー。ごめんねえ」

 あとでいずくんともちゃんと話したいなあ。やはりわくわくしてしまう。

 私の高校生活は、良いスタートを切れそうだ。
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