天使は甘味をご所望です




「名無今度メシ行こーぜ!名無って何好きなん?」
「甘いもの!」
「即答かよ!かわいいな相変わらず!」

 天使健在!名無まじ天使!ああー癒されるー声かけてよかったなー俺。歩くマイナスイオン。そうか名無は甘いものが好きなのか、女の子らしくて尚一層かわいい。正に天使。
 俺が天使に話しかけたことで面白くなさそうにこっちを見ていたクラスメイトたちも、名無の答えに同じく癒されているのがわかった。これぞ天使パワー。お前らよかったな俺のおかげで名無の好きなもんわかって。

「じゃあさ、ケーキとか好きか?奢るから一緒にケーキ屋とか行かね?」
「えっ!?行く!!」
「即答かよ!かわいいな!!」
「えっ、えっ、奢ってくれるの!?ほんとに!?いくらまでならいい!?」
「女の子に奢るっつってんだから、好きなだけ食っていいぜ!!」
「わーーっ!!ほんとに!?ほんとに!?上鳴くん好きだーーー!!」

 ていうかこれだけ俺の相手してくれて好きだとか言ってくれる女の子名無しかいねーよ俺泣きそうだわ。ケーキくらいいくらでも奢ってあげたい。女子の食う量なんてたかが知れてるけど。
 いやしかし、さっきまで天使パワーで和んでいた空気が一変した。クラスメイトの視線が刺さる。まあそりゃあそうだよな!俺天使とデートの約束しちゃったもんな!こんなにツいてていいのか俺!
 それにしてもお前らホント名無大好きか、大好きだな。俺も大好きだし。だからって目線で殺そうとするな俺を。悔しかったら自分で誘え。

「おいアホ面」

 そう、特にこいつ。
 俺が名無に話しかけたあたりからガンつけて来ていた爆豪が、遂に痺れを切らしたのか声を上げた。……つうかアホ面って呼ばれ慣れちゃったことがつらい。

「一応忠告しとくぞ。やめとけ」
「なんだよ爆豪羨ましいのか!羨ましいだろ!男の嫉妬は醜いぜ!」

 お前はいっつも天使独占してんだろうが爆破野郎!偶には俺にだって分けろよ天使を!
 そんなこと声に出したらめんどくさくなるから言わないでおくけど、にやける口元は抑えられないし抑えるつもりもねえ!

「俺はてめーのために言ってやってんだよ。……まあ、しが喜んでっからいいけどな」

 名無は未来のケーキを想像しているのかにへにへと笑っている。なんっだその緩みきった表情!かわいい!もうかわいすぎて意味わかんない!!爆豪はそんな名無を見て鼻を鳴らした。


 このとき爆豪の話をよく聞かなかったことを、後に俺は後悔する。



  ***



 まあ結論から言おう。名無、ちょー食う。

「本当にありがとう上鳴くん!このお店来てみたかったんだあ!!おいしい〜!!」
「……いや、うん……名無が喜んでくれてんなら良かったよ……」

 早速放課後、最近人気のケーキ屋へ名無を連れてきた。一応ちゃんとしたケーキ屋なだけあって単価は決して安くない。その上テーブルの上にこれでもかと積み上げられた皿、皿、皿。

 何より、名無の胃袋がおかしい。

 いや、だって絶対におかしいんだ。小柄としか言えないこいつ自身の全体積分以上は食べてる気がする。最早胃がどうのとかいう次元じゃないと思う。きっとこの天使の口は四次元なポケットに繋がっている。

「ほらな、だから言っただろ」
「っ、つーかなんでお前らまでいんだよ!?」

 軽く憐れみながら言ってくる爆豪(お前さてはコレ知ってたろ、じゃあ言えよ!言ってたなそういえば!)をはじめ、クラスメイト達が何故かケーキ屋まで着いて来ていた。まあ爆豪や女子どもは予想の範疇としても、轟までいるのには驚いた。

「二人きりで出かけるのをみすみす許すとでも思ったのか?」
「なんだよ!別にいいだろお前ら自分で誘えよ!!」
「当たり前だ。名無、次俺が奢ってやるから行きたい店考えとけ」
「!! ほんと!?」
「ああ」
「わー!嬉しい!!轟くん好きー!!」
「そうか。好きなだけ食わせてやるよ」

 天使の「好き」を頂戴して轟はご満悦だ。なんだこいつ、いつもの冷めた感じはどうしたんだよにやつきやがって。気持ちはわかる。
 ……つうか他の女子までケーキ頼んでね?いつの間に、ってかそれ同じ伝票だろおいやめろ俺のサイフのライフはとっくにゼロだよ!

「おいし。そういや昨日ババアがケーキ買ってきてたから帰りうち来いよ」
「いいの!?やったー!かっちゃん大好き!」
「ンなこと知ってる」
「爆豪はチート過ぎるだろ色々と!!」

 ああ、男子高校生には痛い出費だ……なんでクラスの女子に破産させられそうになってんだ俺…………


 ……まあでも名無がすげえ嬉しそうだから、もうなんでもいいか。
 
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