隣の席の猫人間
「はじめまして。名無しです」
「……? 心操人使です」
「心操くんか。よろしくね」
「よろしく……」
「急にごめんね、なんだこいつって思ってるでしょ」
「うん」
「あはは、変に誤魔化すより断然いいね」
「なに?なんか用?」
「ああそうだった。あたし今日は誰かとごはんを食べたい気分なの。一緒に食べてもいい?」
「……別にいいけど、なんで俺なの」
「心操くん、猫好きでしょ」
「!」
「猫好きは長年の勘でわかるのです。席隣なんだしさ、仲良くしよー!」
***
「改めてすごいね、その耳」
「すごい?」
「本物の猫みたいで」
「まあ猫だからね。心操くんめちゃくちゃ触りたそうな顔してるけど耳はだめだよ」
「……しっぽは?」
「だめ」
「…………」
「えっ、そんな顔しないで!どんだけショックだよ!」
「…………」
「イノセントな目で見ないで!!あたしがいじめてるみたいじゃん!」
***
「名無さんがこんなに饒舌だとは思わなかったな。昨日ずっと寝てたし」
「昨日は喋りたくない気分だったからねー」
「気分なんだ」
「気分だよ。ていうか心操くんこそこんなに喋ると思ってなかった。クールっぽいし」
「俺は意外と喋るよ」
「自分で意外って言うのか」
「だってよく言われるし」
「うん、まあ確かに意外。これからおしゃべりしたくなったら話しかけるね。うざがらないでね!」
「それは約束できないけど」
「えーそこは耐えてよ」
「ていうか名無さん食べるの遅いね」
「うーん、喋っちゃうからかなあ」
「(いや、一口が小さいからだろ。猫かよ)」