それぞれの個性




「うわああこれすごい!これすごいね!障子くんすごい!ありがとう!」

 どうやら増えた腕の先端は、手以外にも目とか口とか、色んな部位を反映できるみたいだ。すごい。ますます汎用性高い。この腕常備したい。今なら空でも飛べそう。

「しちゃんの個性って、もしかして……」
「人の個性借りられるんだあ!"記憶"っていうんだけどね」

 そう、私の個性は"記憶"、メモリーだ。

 対象に意図的に触れることでその人の個性を記憶して使うことが出来る。触れた後基本的に忘れることはないけど、意図して消すことはできる。一度に発動できるのはひとつの個性だけだけど、工夫すればオリジナルには出来ないことが出来るようになることもある。反対に、記憶しただけではほとんど使い物にならない個性も偶にはあるけれど……基本的に色んな使い方を考えられるのがとても楽しい。

 ちなみに一度見たものや読んだものも忘れない。人の顔と名前も覚えられるし、勉強にも役立つから、我ながらこの個性ちょー便利だと思う。

 軽く個性の説明をすれば、漠然と羨ましがられる。こういう反応は慣れっこだけど、いつも思う。

「でも、皆の個性がすごいからこそ私の個性が活きるのであって……私はあくまでも借りてるだけだから、皆に感謝だよ」

 というわけで、私にとって周りの人の個性を把握することは、一般以上に大切なことなのだ。誰かの個性は、私の個性になりうる。はやくクラスメイトと仲良くなって、どんな個性なのかを知っておかないと。

 こんなことを言うと相澤先生に怒られてしまいそうだけど、たくさん友達できるといいなあ。



 第3種目の立ち幅跳び、第4種目の反復横跳びをなんとか切り抜け、第5種目。ボール投げだ。

 さっきのかっちゃんの投げ方がかっこよかったので真似してみたけど、結果は322m……うん、イマイチだった。「てめー俺の個性でショボい記録出してんじゃねーよ!」と怒られてしまった。面目ない。

 元々の運動神経もあるだろうけど、やっぱり使い慣れてる人には敵わないのが普通だ。とはいえ、実はもうひとつ個性を借りてきているのだ。これは慣れとかあんまり関係なさそうだし。借りた個性を発動すれば、確かにボールが軽くなった。

 軽く投げただけで憧れの"∞"を叩きだす。うん、こういう個性いいね。単純で使いやすい。

「お茶子ちゃんごめーん!借りちゃった」
「あっ、ずるーいしちゃん!」
「えへへ、良く言われる。ごめんねえ」

 ああ、ヒーロー科、楽しい!
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