再会と挨拶
「うん、どう見ても太ったね。この半年間で一体何があったんだい」
「そんなに言うほど太ったか?」
「えっもしかして自覚がないのかい?今君結構大変なことになってるけど…もしかして気付いていないのかい?」
半年前のバルバッドの一件以来初めて会うアリババとアラジンは、相当太っていた。ナナシは最早笑顔が引き攣ってしまっている。
「俺の留守中にジャーファルが甘やかしたんだ」
「うん。ジャーファルさんなら仕方ないですね」
「お前のそのジャーファル贔屓は何なんだろうな…」
再びシンドバッドの元を訪れたナナシは、後ろに控えるマスルールよりもまず最初に、変わり果てた二人の少年に驚いた。
怠惰と不摂生によるものだと一目でわかる弛んだ身体は、あまりにも哀れで目も当てられない。
ナナシはその文字通り目を逸らし、彼らと同じ状況下にありながら、以前と全く変わっていないモルジアナへと目を向ける。
「久しぶりだね、モルジアナくん。君は変わらず愛らしくて安心したよ」
「お久しぶりです。ナナシさんもシンドバッドさんと一緒に帰ってきていたんですね…お帰りなさい」
ナナシはモルジアナの頭を撫で、モルジアナもそれを快く受け入れた。気持ち良さそうに目を細めるモルジアナの姿に、ナナシだけでなく、その場の誰もが癒された。モルジアナにこんな表情をさせられるのは、ナナシだけである。
そんな中ナナシはふと、モルジアナのすぐ隣に佇むマスルールと目が合った。
「……」
「……」
両者特に何も言わず、やがてナナシが気まずそうに目を逸らしたのみであった。
「ジャーファル、ナナシとマスルールの様子がおかしいぞ」
シンドバッドはその様子を不審に思い、ひそひそと隣に控えるジャーファルへ問い掛けた。
ジャーファルは気まずそうな二人を一瞥し、溜息をつく。
「おそらくあの二人は仲が良すぎた故に、長く会っていないとどう接して良いのかわからなくなるのでしょうね。バルバッドで会った時にも気まずそうにしていましたし」
「なるほどな」
シンドバッドは暫し思案した末、お手上げだとでも言うように肩を竦めた。
「あいつら自身で何とかしてもらう他ないな…二人きりにでもしてやるか」
「そうですね。ちゃんと話せばすぐ元通りになるでしょう」
「アリババくん、それとアラジンにモルジアナ。少し話があるんだ、一緒に来てくれ」
当然のように着いていこうとするナナシとマスルールを、シンドバッドは制する。
「俺は彼らに話があるんだ。ナナシとマスルールはここで待っていろ」
「はあ…わかりました」
マスルールは特に何も考えていないようだが、ナナシはシンドバッドの思惑に気付いたのか、眉根を寄せた。
「じゃ、ジャーファルさん…?」
頼みの綱のジャーファルに助けを求めるも、ジャーファルは優しく微笑むだけで、扉を閉めてしまった。
微妙な空気が流れる空間で、ナナシはある決意をすることになる。
「(よし、あとでシンくんをぶん殴ろう)」