再会と挨拶
「あぁ、シャルルカンさんにスパルトスさん。こちらにいらっしゃいましたか」
「お、ナナシじゃねーか!良く帰ってきたなあ!」
「実に二年振りか」
「ええ、長らくご心配をおかけしました。お元気そうで何よりです」
ナナシは手を組み、深く丁寧に礼をする。二人は軽く驚くが、すぐに笑って彼女を迎えた。
「なんかお前、ジャーファルさんに似てきたなー」
「そうでしょうか?」
「ああ、礼の仕方がそっくりだ」
「そうですか…」
ナナシは照れたように微笑む。尊敬しているジャーファルに似てきた、という言葉が相当嬉しかったのだろう。
妹のような存在であるナナシの微笑ましい成長に、二人もどこか嬉しくなる。
「それにしても…」
シャルルカンはそう言葉を留めると、ナナシを頭から爪先まで眺めた。
スパルトスが女性に対して失礼だと注意するも、全く聞く耳を持たない。
「お前、美人になったな」
「え、」
途端ナナシは赤面し、目を逸らして俯いてしまう。
そんなナナシの予想外の反応に、二人は顔を見合わせた。
「…えっと、ありがとうございます」
「おう、女らしくなったってーの?これは兵達が放っておかねぇなあ」
「あーっと、ヤムライハさんにも先程、似たような事を言っていただきましたが…」
「げっ…あいつかよ」
シャルルカンはヤムライハと同じ発想であったことに苦い顔をするが、ナナシがこんな反応をするのは珍しいと、すぐにそちらへ意識を戻した。
当のナナシはと言えば、あまり女として褒められることに慣れていない所為か、やはり先程までの落ち着きがなくなっている。
「しかし、ナナシにはマスルールがいるのだろう?」
「あ、思い出しました」
ナナシはぱっと顔を上げ、何事もなかったかのように話題をすり替える。
「あの、マスルールさんがどこにいらっしゃるか知りませんか?」
「マスルール?まだ会ってねーのか?」
「はい…入れ違いになってしまっているのか、中々お会いできなくて…」
「マスルールなら、王の元へ向かうのを見たが」
「あぁ、やはり入れ違いに…申し訳ありませんが、僕はこれで失礼します」
ナナシは再度手を組み、礼をした。
彼女がどれだけマスルールを想っているかを知っている二人が、彼女を引き止めることはない。
「また今度飲みにでも行って、色々話聞かせてくれよな」
「ええ、是非」
二人は、再度会釈をして去っていくナナシの背中を見送った。
「……」
「胸が育ってたな」
「…私はそういった話はしない」