出会う
そのオラミーが辿り着いたのは、一本の樹の元だった。特に大きいというわけではないそのたった一本の樹の根本辺りに、積み重なるように森の動物達が集っている。
マスルールはその集いの中心を見て、目を疑った。
「ぴ、ぴ、ぴぴ、ぴ」
少女だった。
マスルールと同じくらいの少女が一人、木陰に座り込んで動物達に囲まれていた。いやむしろ、"埋もれている"と言った方が適切かもしれない。
今にもこぼれ落ちそうな程に大きな瞳を好奇心に染め上げて、少女は一羽の雛鳥をそっと抱え上げた。
まだ飛べそうにもない生まれたての雛鳥を、至近距離で見つめる。にもかかわらず、親鳥は少女を警戒することなく、彼女の足元でその様子をただ見ていた。
少女は雛鳥を両の掌にのせたまま、また声をあげる。
「ぴ、ぴ、」
雛鳥はその声に応えるかのように、小さくピィと鳴いた。
少女は微笑み、雛鳥を親鳥の元へ返す。少女の頭に、肩に、腕にのっている動物達は、少女が動くことによって落ちてしまわぬようにと、バランスをとっている。
そんな動物達に少女はまた、笑いかけた。
ただ呆然とその様子を見ていたマスルールは、ふと、一つの考えにたどり着く。
「(会話、しているのか…?)」
しかしあまりにも馬鹿げていると、その考えを振り払おうとした瞬間。
少女と、目があった。
多少の驚愕に、ほんの少しの不安。そしてそれらを遥かに凌ぐ好奇心。少女は、そんな目をしていた。
少女は数秒間固まったままマスルールを見つめ、やがて思い出したように息を吸った。
「 !!」
何を言ったのかはわからなかった。音として認識するには、その声はあまりにも"無音"だったのだ。少女の回りの動物達はその声に驚いたように、慌てて去っていった。
そして少女は、この上ない程嬉しそうに、無垢な笑顔を浮かべた。
今度はマスルールが驚いた。
次の瞬間、少女が倒れたのだ。