関係と態度




「大変そうだねぇ、アリババくん」

「ぜぇ…ぜぇ…なんで俺がこんな目に……」

「うん。太ってるからじゃないかな」


 ジャーファルさんがあまりにも心優しい方だった故に太りまくったアリババくんとアラジンくんは、只今我等がシンドバッド国王に命ぜられて、走っています。

 一緒に走ってあげようと思ったのに、疲れるのが早すぎてつまらないんだ。僕のトレーニングにはなりそうにもない。


「あのねアリババくん…君ねぇ、仮にも一国の王子様がそんなにぶくぶく太ってるのはどうかと思うよ。今回ばかりはシンくんに賛成」

「だってシンドリアの食べ物どれも美味しくて…」

「それは認めよう。ジャーファルさんが優しいのも仕方ない。つまり食べた分動けって話だよ」

「だから走ってるだろおおう」


 走ってるっていうけどねぇ、アリババくんよ。その君の隣を僕は歩いているのだけれど、それについてはどうだろうか。

 太るっていうのは本当に怖いもので、結構強かったアリババくんがこの有様です。世のアリババファン(いるのかそんなもの)が泣き喚きますよ。

 本当に何のトレーニングにもならないので、片足で跳んで着いていくことにした。



 ぴょんぴょんと飛び跳ねながらアリババくんをいじって遊んでいると、ジャーファルさんを見つけた。


「ジャーファルさん!おはようございます!」

「ああナナシ、おはようございます。昨夜は良く眠れましたか?」

「はい!」


 建物の死角だったけれど、そこにいたのはジャーファルさんだけじゃなくて、モルジアナくんと眠そうなマスルールにも挨拶。


「モルジアナくんとマスルールさんもおはようございます」

「ナナシさん、おはようございます」

「…おはよう」


 …んむ。

 微かにだけど、マスルールの眉間には皺が寄っていて、やっぱり何か機嫌が悪いんだということがわかる。

 けど、逆に言えばそれだけ。何に対して怒っているのか、全くわからない。昨日何か失礼があっただろうか……んん、思い当たらないなあ。


「ところでナナシは、一体何をしていたんですか?」


 ああ、昔は良く悪さをしてそれがジャーファルさんにばれる度にこの台詞を聞いていたなあ…と、何だか思い出してじーんときてしまう。

 そういえば良く怒られたなあ。どうして僕が何かをすると、ジャーファルさんはすぐに気づいてしまうのだろう。


「アリババくんと一緒に走っていました」


 正確には、走っているつもりのアリババくんの隣を歩いていました。


「おや、そのアリババくんは?」

「彼ならあっちに…あれ、アラジンくんが合流してますね」


 つうかサボってんなあいつら。

 芝生に座り込んで楽しそうに話している彼らを呼べば、慌てたように走ってくる。面白い…がしかしあまりにも遅い。どれだけ身体が重いんだ。


「み、皆さんお揃いで…っ!」

「うん。確実にサボってたよね二人とも」

「「うっ」」


 まったく…本当に痩せる気はあるのだろうか。まあ自主的に始めたわけではないから、気持ちはわかるけれども。

 何はともあれ、僕は早く元の可愛らしいアラジンくんが見たいよ。

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