絞めたのは首占めたのは君




 呼吸ができないというよりは、呼吸をしなければいけないということを忘れていた。



 段々と世界が霞んできて、全体に白い靄がかかったようにさえ見える。

 どうしてこうなったのかは、わからない。

 私が彼に何をしてしまったのか、わからない。

 けれど彼はこうしている。

 けれど彼は怒っていない。

 慈愛と覚悟に満ちたような貴方の顔すらも、霞みはじめた。

 微かに聞こえた謝罪の言葉が、堰をきったように溢れ出す。

 何度も、何度も。

 あぁ、私はこんなにも愛されている。

 私はまだ、愛している。

 まだ、貴方がこんなにも愛しい。

 あぁ、あぁ、



「 ありがとう 」



 上手く息が吸えなくて、上手く声にならなかったけれど、きっと貴方には届いたのでしょう。

 貴方は驚いたようだったけど、それでも愛しいこの手は緩まない。

 どうしようもなく愛しているのに、私を連れて行ってはくれないのですね。

 貴方はまた、一人で行ってしまうのですね。

 私を置いて、いってしまうのですね。

 総てを悟り、身を任せた。



 自分がどこにいるのかすら忘れた頃、

 視認できない彼の涙が、私の頬に落ちた頃、

 彼の愛に、どうしようもなく安堵した頃、



 私の世界が、終わった。





絞めたのは首占めたのは君







「愛してるんだ」


 たったひと時、君を一人にしてしまうことを赦してほしい。

 すまない、なんて柄にもない。

 今こうして目の前で、君が呼んでいる。


「あぁ、今行くよ」



 だからあともう少しだけ、待っていてください。



お題
4m.a
 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -