盲目と病弱
「お前…誰?」
「あー、えっと…」
実に、厄介なことになってしまいました。
つい先ほど、淳様に呼び出されました。
以前は自分が何をしでかしたんだろうとびくびくしていたものですが、今では慣れてしまっているので、それは良いんです。今回もどうして呼び出されたのかはわからないんですけどね。
問題は、神代の屋敷内で、美耶子様に会ってしまったということ。
「(これはまずい、です)」
「見たことないし使用人じゃない…お前、なんでここにいる?」
「…淳様に呼ばれておりまして」
「淳に?お前みたいな奴が?」
「え、ええ…まあ」
お前みたいな奴って…立場的には合っていますけれど、出会い頭名前も知らない相手に対してそれはどうなんですか美耶子様…。
というか、見た目のことですよね、おそらくは。
「(昔から美耶子様とは似ていると言われてきたんですけど、やっぱり本人はわからないものなんでしょうか)」
かくいう私も、知り合いにそう言われる度に理解できないまま否定していましたが。
未だに美耶子様は、見えていないはずの目でじっとりとこちらを睨んでいらっしゃいます。
…本当はあの犬の目を使っているとわかってはいても、こうも睨まれると居心地が悪いものです。どうしたものでしょうか。
「あの、それでは私はこれで…」
「淳に呼ばれてるんじゃないの?」
「あはは…そうなんですけど」
自然に逃げようとすると普通に止められました。本当にどうしましょうか、この状況。
「待ってるんでしょ、淳のこと」
「はい」
「じゃあ私もここにいるから」
「…はい?」
「別に、気にしないで」
そう言うと向かいの壁に寄り掛かって、今度は廊下の奥…おそらく、淳様がいらっしゃるであろう方を見られています。
犬はこちらを見続けていますけど、少しは気持ちが楽になりました。
…それにしても、美耶子様は一体どうなさったんでしょうか、やはり不思議な方ですね。
盲目と病弱
黒と白はよく似ている