誤警報
ナッティが、おかしい。
いや、ナッティはいつもおかしいだろとかそういう、失礼なことではなくって。
いつもと違う、って意味で、ナッティがおかしい。
「…ナッティ、ケーキ、いらないの?」
「いらないよー、スニフと約束したんだー」
それにゲームがあるもん、お菓子はいらない。久しぶりに訪れたナッティの家で、家主である彼はそう言った。おかしい、絶対におかしい。
ここ一年近くナッティを街で見かけなかったから心配で家を訪ねてみたところ、何度ノックしても全然出て来なくて、やっと出て来た彼の装飾品が総入れ替えしていて、驚いた。
どうやら彼は今ゲームにハマっているらしい。それまでお菓子に向けていた愛(?)が、今はゲームに向いているようだ。
身体でも壊したのだろうかと思って折角ケーキを作ってきたというのに、無駄になってしまった。一人でこんなに食べられるだろうか。
「じゃあそのゲームは、リフティシフティから買ったの?」
「んとねぇ、最初は二人からだったけど、そのあと自分で色々買ったんだよー」
見る限り寝ずにプレイしているようだけど、ご飯はちゃんと食べているんだろうか。カップ麺のゴミが散らかってはいるが、どれくらいのペースで食べているのかまではわからない。
私が来てからも、彼は画面を見続けていた。以前は仲良くしていたのもあって、なんだか寂しい。
「じゃあ、私今日は帰るね…?」
「あっ、ねぇ」
ナッティがどこかのボタンを押して、ゲームは一時停止画面にかわる。振り返ったナッテッィは、しっかり焦点の合った無邪気な疲れ目で、私を見た。
「また来てね!」
笑った彼に、安堵する。
アクセサリーも以前とは全く違うし、前より少しそっけないし、何より甘い物を食べなくて、なんだかやっぱりおかしいけれど。
それでもナッティは、ナッティだった。
「また来るね」