好きなもの
「……ちゅー」
「へ?」
俯いていたナッティが顔を上げた。
「じゃあ、代わりにちゅーしてくれる?」
まだ目には涙が浮かんでいて、そうして見上げてくる様子は、親に甘える幼児のそれと同じだった。
負けたと思う。どうしたって、彼には敵わない。
ゆっくり顔を近付けて、そっと唇に口づける。微かに甘い、キャンディの味がした。
離した瞬間首に腕を回され、きつく抱きしめられる。そのまま強く引かれ、されるがままソファーに倒れ込んだ。
耳元に感じる彼の吐息と、いつもとは全く違う、彼の真面目な低い声。
「来年は、妥協してあげないから」
そう呟いて私を解放する彼の顔には、いつもの無邪気な笑みが張り付いていた。
バレンタインデー
甘いお菓子も良いけれど
何よりキミが美味しそう