水縹 | ナノ

遺言

待ってる

彼は小さく笑ってそう言った。
彼はいつも笑顔だった。
彼は誰にでも優しかった。
彼はお調子者だった。
彼はせっかちだった。
彼はいじわるだった。
彼は少し臆病だった。
彼は痛みに敏感だった。
彼は異常だと誰かが言った。
彼は普通だった。
彼は待っててと言って笑った。
彼は僕を置いていくのだと悟った。
彼は嘘をついた。
彼は尻尾が好きだった。
彼は千年祟ってやると言った。
彼は全てを愛していた。
彼はごめんと言った。

彼は重さを残していった。

彼は、追いかけていった。

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