捕獲と連行



今更なのじゃが、率直に言うと儂は上級生(特に五、六年)には、かなり嫌われているらしい。
いや、この場合嫌われている、というより疎ましく思われている、と行った方が適切であろうか。
その理由のほとんどは儂の境遇にあるものだが、そんなことは自分でも把握しているので、思い出すのはやめておこう。



とにかく、儂は上級生に嫌われておるのじゃ。



まあ今目の前にいる暴君やらは例外じゃが、先程の潮江六年生が良い例。
あ奴は早朝の出会い頭、しかも久しぶりに会ったというのにただ一言「引きこもり」と悪態をついていった。
無論、あ奴が悪態をつくのは儂だけ。潮江六年生にも喧嘩をするような奴は六年にもいるが、それでも悪態をついたりはしない。
つまり、春休みが明けようとも、儂に対する態度は相変わらず、ということじゃ。
脳内の説明を終えると同時(誰に対しての説明かはご愛嬌ということにしてほしい)、七松六年生が思い出したように儂に問うた。


「それにしても、秋椰は相変わらず起きるの早いよなー!何かしてんの?」

「いや、ただ目が覚めるのが早いだけじゃよ。小平太は夜通し塹壕掘りか?」

「いや、今日は裏裏裏山までずっとランニングしてたらいつのまにか朝になってた」


うむ、こちらも相変わらず馬鹿のようだ。
こちらは変わっていなくてある意味安心した。










■□■□■










「……ふう」


空になった食器をカウンターに預け、一息つきながら食堂を出る。
さっさと食べて部屋に戻るつもりが、七松六年生と話していて思わず長居をしてしまった。
食堂もそろそろ人が増え始めるころじゃ。それを証拠に、今も新品の井桁模様の忍び服に身を包んだ一年生とすれ違う。
すれ違った一年生は皆不思議そうにこちらを見ている。まあ一人だけ忍服ではなく着流し姿だからであろう。
だからといって、対して何も感情は覚えない。
ただ好奇心と疑心で見られているだけ。そんなの、自分にとってはよくあることだ。
案の定、今日も何もすることはない。
それならば一度自室に返ってもう一眠りするか、そう思ったとき。


「……暁成、お前何処に行こうとした?そっちは食堂じゃないぞー」


目の前には紛れもなく隣人の姿。
全く、今日は保健委員の不運が移っているのじゃろうか。六年生に続いて今最も会いたくない奴に会ってしもうた。


「……なんじゃ半助、他人行儀な呼び方じゃのう。
もう朝餉は食したさ。なあに、ちと早く起きすぎたからもう一度寝に行こうかと思っただけじゃ」


にこりと笑って隣人――――土井半助を見上げれば、半助は同じようににこりと笑い返した。
もちろん、双方どちらにも笑顔の裏には別の感情が渦巻いている。


「では儂はこの辺で……」


そそくさと笑顔のまま立ち去ろうとしたが、半助はそうはさせてくれなかった。
いつのまにか首根っこが掴まれていて、身動きが取れない。


「まあまあ、そうとは言わず着いて来い。私が担任のは組の生徒達と話そうじゃないか。皆良い子たちばかりだぞー?」

「嫌じゃ!半助離せ、離すのじゃ!」

「いーや駄目だ!」


対人関係が激しく苦手な儂に、なんて無茶なことを言うのじゃろうこ奴。
しかも一年生?悪いことは言わないからやめておけ、一年生なんて儂と話しても恐怖心を植え付けるだけじゃ!
そんな抗議の声も虚しく、横暴な隣人に(誰が横暴だ!などと怒鳴る声は無視しよう)再び食堂まで引きずられていくのであった。










*****


やっと土井先生出せた
土井先生は秋椰の保護者ポジションだったり




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