入学と任命
ふわり。
入学式を待ち構えていたかのように咲き誇った桜の花の匂いが、鼻をくすぐる。
場所は忍術学園学園長室。目の前で正座をしたまま茶をすする白髪の老人は、ここの学園長だ。
「暁成秋椰」
「はい」
「お主を――――本日より、忍術学園用心棒兼教員補佐に任命する」
「はっ……この暁成秋椰、命に代えてでも、学園をお守りさせていただきます」
■□■□■
「あれ〜?秋椰さん、珍しいですね〜こんな昼間っから部屋の外にいるなんて」
「秀作、それは流石に儂でも傷つくぞい?実は、ちと学園長殿に呼ばれてしもうてな」
「学園長に、ですか?」
学園長室の庵から出て少し離れた廊下で出会ったのは、忍術学園の事務である秀作。
竹箒を持っているところを見ると、おそらく吉野教員の言いつけで庭の掃き掃除でもしていたのじゃろう。
良く見てみれば、秀作の事務制服はところどころ土で汚れている。……また蛸壺にでも落ちたのか?
そんな心配をしながらも事情を説明すると、秀作は不思議そうに首を傾げた。
「秋椰さんは確かに実力だけはあるから用心棒はわかるんですけどー……なんで教員補佐まで?」
「さあのう、それは暁成にもわからん……というかお主、今さりげなく儂を馬鹿にせんかったか?」
「あはは〜何のことかなあ。あ、もうそろそろ各組の顔合わせが終わるころですね」
秀作に言われて見てみれば、学園長の忍犬であるヘムヘムが、終礼の鐘を鳴らそうとしていた。
あの鐘を鳴らせば、教室にいるであろう学園中の生徒や教員が教室から自室へ戻る。
もちろんそれは、儂の隣室の教員も例外ではない。
「秀作すまん、儂はそろそろ部屋に戻らねば」
「ああ、土井先生ですか?」
「まあな。今朝もあ奴より早起きして逃げてきたのじゃ。その苦労を無駄には出来ん」
確か隣人の担任する教室は一年は組だった。ここから一年の教室はそう遠くない。
捕まったら最後、熱心なあ奴のことだから、は組の生徒に会っていけやら喧しく言われるじゃろう。正直、よけいな世話だ。
せっかく昨日の夜からそれを避け続けているのだ。こんなにも早く捕まるわけにはいかない。
秀作に別れの言葉を継げると同時、儂は自室のある教員長屋へと続く廊下を走り出した。
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小松田さん可愛くて好きです
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