サマーデイズ



「あっつ……」

「暑いって言うから暑いんだよ」


隣に座るソイツは、縁側でクリアファイルで扇ぎながら寝転んでいる俺を見て苦笑した。
古い木造の家を囲むようにそびえ立つ木々に山。
高校三年の夏休み、都会の喧騒から逃げるように――
――まあ言ってしまえば親と進路のことで喧嘩して――――家を飛び出してやってきたのが、ド田舎にある祖父母の家だった。
といっても、二人とも俺が生まれる前には既に他界していたらしく、この家には誰もいないはずだった。


「じゃあ逆に寒いって言えば良いのかよ」

「全く君は何というか、本当に天の邪鬼だね」

「うるせー」


はずだった……のだが。
実際やって来てみれば、誰もいないはずの家には、何故かソイツがいて。
結局他にいく宛もない俺は、よくわからないままソイツと残りの夏休みをここで過ごすことにした。
縁側に下げてある風鈴が、ちりん、と軽い音を立てる。
ソイツが付けたであろう風鈴は、ソイツの瞳と同じ金色をしていた。
キレイだな、と思いつつ、気温と正反対の少し涼しい風に、目を閉じる。


「おや、寝るのかい?」


ソイツの言葉に返事をする前に、俺はもう目を閉じていた。
そっと俺の髪に触れたソイツの細くて白い指がくすぐったくて身をよじると、
久しぶりに、なんだか懐かしいような優しい声で「おやすみ」と言われた。





*****


人×人外が書きたかったんだと思う。女の子は鬼のイメージ。
お題は『山』『風鈴』『クリアファイル』




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