ついに、ヒーロー仮免許取得試験当日!!


「緊張してきたァ」
「試験で何やるんだろう。ハー仮免取れっかなァ」

皆が緊張にソワソワする中、相澤が峰田の不安そうな声にダランと前かがみになって咎めた。

「峰田。取れるかじゃない。取ってこい」
「おっもっモチロンだぜ!」

「この試験に合格し、仮免許を取得できればお前らタマゴは晴れてヒヨッ子…セミプロへと孵化できる。頑張ってこい」

相澤の激励にまだ緊張はするものの、それを上回るやる気で満ちた凛たちは気合いを入れるために雄英伝統の円陣を組んだ。

「せーのっPlus…」

「「Ultra!!」」

突然聞き覚えのない大声がして、そちらの方を向くと知らない大男が円陣に加わっていた。

「勝手に他所様の円陣に加わるのはよくないよ。イナサ」
「ああ!しまった!どうも大変失礼しましたぁぁぁあ!!」

同校の生徒に注意され、イナサと呼ばれた男はガァァン!!と大きな音が響くほど、地面に頭を打ち付けて謝罪した。
あまりの、テンションの激しさにA組はもはやドン引きだ。

しかし、そんなA組をよそに他校の生徒たちがテンション高すぎ男を含む彼らの制服にざわめいた。

「どこかで見たことあるような…」

凛も見覚えのある制服に、思い出せず頭をひねったが爆豪がぼそっと呟いた。

「東の雄英。西の士傑」

そうだ!と彼の言葉で凛はようやく思い出した。
数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵するほどの難関校・士傑高校だったのだ。
父の母校に入るつもりだった凛は受験をしていなかったが、やはり有名なヒーロー校ということもあって、受験期にはチェックしていたのだ。

「一度言ってみたかったっス!プルスウルトラ!自分雄英高校大好きっス!雄英の皆さんと戦えるなんて光栄の極みっス!よろしくお願いします!」

「あ、血」
「行くぞ」

頭を上げたその男はドロっと血を流しながらも、雄英好きを熱く語った。
そのまま、男女の生徒に連れられ士傑は去っていった。

「夜嵐イナサ」

「先生。知ってる人ですか?」

夜嵐を見て、ボソッと相澤が呟いた。
初対面のはずの男のフルネームを言った相澤に葉隠が当然の疑問をぶつけた。

「ありゃあ…強いぞ。夜嵐、昨年度…つまりお前らの年の推薦入試をトップの成績で合格したにもかかわらず、なぜか入学を辞退した男だ」

その言葉に皆ざわめいた。
推薦入学のトップということは、実力はクラスでもトップクラスの轟以上であるかもしれないと容易に推察できたからだ。

「雄英大好きとか言ってたわりに、入学は蹴るってよくわかんねえな」
「ねー変なの」

「変だが、本物だ。マークしとけ」

相澤の言葉に改めて仮免試験のハードルさを思い知ったA組。

「焦凍は覚えてるか?試験一緒だったんだろ?」
「いや…覚えてねえ」
「そうか…」

轟に斜め下から覗き込むようにして尋ねた凛だったが、彼の返事にまぁ試験が同じでも話したことのない相手なら覚えてなくても仕方ないかとすぐに納得した。

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直で会うのは久しぶりだな!結婚しようぜ」

「しない」

「わあ!!」

突然やってきたプロヒーローらしき女性は相澤の知り合いらしかった。
その女性が出会い頭に一発結婚を申し込むのを、相澤は一蹴したが、芦戸はまさかの担任の恋の予感に胸をきゅんとさせた。
その一方で、相澤の心底嫌そうな表情に珍しい反応もあるんだなと担任の新たな一面を知った凛であった。

「しないのかよ!ウケる!」
「相変わらず絡みづらいな。ジョーク」

ジョークは振られてもめげるどころか、吹き出して笑うので、これはいつもの冗談のやりとりだとうかがえる。

「スマイルヒーロー『Ms.ジョーク」!個性は『爆笑』!近くの人を強制的に笑わせて、思考・行動共に鈍らせるんだ!彼女の敵退治は狂気に満ちてるよ!」

ヒーローオタクの緑谷はジョークのことを知っていて、いつものように興奮して説明を始めた。

「なんて恐ろしい個性なんだ…」

相手の戦闘力をある意味無効化する個性に凛は思わず、ちらっと爆豪の方を見て彼が爆笑している姿を想像してしまった。
彼女が自分で関して良からぬ事を考えていると、獣並みの勘を持つ爆豪はギロッと凛をすぐに睨みつけた。

相澤とジョークは昔事務所が近く、その時からの付き合いだそうだ。
そして、彼女も今はヒーロー科のある高校で教職をしているのだ。

「おいで皆!雄英だよ!」

「おお!本物じゃないか!」
「すごいよ!すごいよ!TVで見た人ばっかり!」

やって来た生徒たちはA組を見るなり、わぁっと芸能人にするような反応をした。

「傑物学園高校2年2組!私の受け持ち、よろしくな」

「僕は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね。しかし、君たちはこうしてヒーローを志し続けているんだね。すばらしいよ!不屈の心こそ、これからのヒーローが持つべき素養だと思う!」

次々とA組の手を握っていき、最後にウィンクまできめる真堂は眩しいほどに爽やかだった。
ドストレートな爽やかイケメンだ…とA組が唖然とする中、くるっと彼は凛と爆豪の方を向いた。

「中でも神野事件を中心で経験した八木さんと爆豪くん!君達は特別に強い心を持っている。今日は君たちの胸を借りるつもりで、頑張らせてもらうよ」

ス…と手を伸ばし握手を求める真堂に爆豪はその手を払いのけた。

「フかしてんじゃねえ。台詞と面が合ってねえんだよ」

「こらおめー失礼だろ!すみません。無礼で…」

「いいんだよ!心が強い証拠さ!」

爆豪の態度に切島が代わりに謝った。
同じく握手を求められた凛も言葉にはしないが、爆豪と同意見だった。
彼の言葉に嘘はない…しかし裏があるような気がして凛は差し当たりなくニコッと微笑むだけに止めておいた。

「ねぇ轟くん。サインちょうだい!体育祭かっこよかったんだぁ」
「はぁ…」
「焦凍。ヒーロー目指してるのならば、もう少しサービス面も気にした方がいいぞ」

中瓶が轟にサインを求めるが、当の本人はなんとも素っ気ない態度を返した。
そんな彼を隣で凛は若干呆れた顔をした。
しかし、そんな彼女のもとにも嵐がやってきたのだ。

「凛様だ!」
「握手してください!」
「凛々しくて美しい!」

次々と女子生徒がやってきて、凛を囲んだ。ある意味ハーレム状態だった。
凛もこの状況には手馴れたもので、自分ができること範囲なら対応してあげていた。

「そう言えば最近夏休みで忘れてたけど、八木って雄英にファンクラブが既にあったよな」
「いや、これはもう既に全国規模になってそうだ…」
「八木!そこ代われぇぇええ!」

男子からしたら何とも羨ましい状況に、思わず唖然とした。
峰田だけは、羨ましすぎて血涙を流していたが。

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